【long】

□霹靂
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翌日、我が青学レギュラーメンバーは都内某所にあるボーリング場へ足を運んでいた。

緒戦勝利のご褒美、ベスト8進出のお祝いはスミレちゃん主催の、


なぜかボーリング大会だった。


「タカさん家の寿司のがイイっ!」

若干数名が駄々をこねる中、始まったゲームは… 言わずと知れた乾くんの特製野菜汁“青酢”の惨劇で、場内を騒然とさせていた。

「ハハ、出なくて良かったね…」
「うん…」
「……」

私は、怪我の様子見で見学していたタカさんと国光の隣、

「みんなのお祝いだから」と参戦を辞退したことにひそかに安堵して。

「英二くん上手い!」
「うん、英二の奴ノってるね」
「ほう、なかなかやるな」

楽しい雰囲気の中、その様子を二人と笑って見ていたのだけれど…




実のところ、胸中は複雑だった。




「え、九州?」
「ああ…」

氷帝との試合の後、かかりつけの病院へ向かった国光は、そこである宣告を受けた。


「治療の為に、熊本にある青春学園大附属の病院へ──」


事後報告として手塚家の家族とそれを聞いた私は、もちろん驚いたし、 やはりそれほどまでに肩の状態がひどかったのかと治療をすることへの心配、

国光がしばらくいなくなってしまうこと、青学テニス部の士気に影響が出るのではという懸念、不安な点は多々あるけれど、 その不安は少し妙で引っかかる。

「ふむ、致し方あるまい」
「そうだな、そういうことなら早い方がいい」
「そうね…」

その話を聞いた時、国一おじいちゃんと国晴パパ達は状況をすぐに理解して同意を示した。私は…

「ねぇ国光、」
「どうした?」
「私もついて行こうかな」

「……は?」

思いもしていなかっただろう発言に驚いた顔をして、唖然とした国光に、

「冗談だよ…」と控えめに笑ってみせた。

「あら、それなら私も行こうかしら」
「じゃあ三人で行くかい?」
「国晴お前…もしや儂を除け者にしてはおるまいな」
「いや言ってみただけですよ」
「ならば儂が遥奈と行くわ」
「心配なのはみんな同じですものね」

張りつめていたものが、少しでもほぐれたかな…
やいのやいのと賑やかす家族のその影で、微かに笑んでいた国光と同じように、




壁に立ち向かう決意を秘めて、

国光を送り出す覚悟を決めた。




スミレちゃんの説明を受けて、それならと了承した仲間達と、私も、同じ思いで待つよ。




「全国には揃って出場だよ。国光、…約束ね」
「ああ。

 遥奈、青学を頼んだぞ」

その凜とした眼差しに背くことなんて何もない。




この思いを何と言葉にしたらいいのか。本当の気持ちはまだ気付かず隠されたまま。

違和感を孕んだこの不安が何を意味しているのか分からないまま、

国光の出立はもう明日へと迫っていた。


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