【long】

□片陰
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それはスミレちゃんなりの気遣いか、はたまたタチの悪い冗談か、

「…だったらどうする?」なんて私が笑って返す前に、

「ブッ!!!!」

隣に寛いでいたリョーマがファンタを吹き出した。

「Σぅわっ、きったないなあ「くだらないコト言わないでくれない?」
「え?」

見やったリョーマは真剣そのもので。少し、いやかなり呆れたような顔をして言う。

「ていうか… 冗談でも笑えないんだけど」
「何が?」
「え… だって、手塚部長と…って、ソレってキンシンソーカンてヤツでしょ?」
「近親…」

私は、

そんなリョーマを小馬鹿にしたわけではないけれど、

「…フッ、あはははっ。私と、国光が?あははははっ」

それこそ的外れなその見当が可笑しくて可笑しくて、笑いが止まらなかった。

「っていうかどこでそんな言葉どこで覚えたのよ、 あーお腹痛い」

あまりにも唐突なリョーマの解釈に笑い転げる私と、

「全く…冗談に決まっとろうが」スミレちゃんが呆れる素振り。

「だって部長と遥奈先輩って兄妹なんでしょ?」
「……え?」


そしてその一言に、私は身を固まらせたのだった。


「兄妹、ねぇ…」

耳を疑うまでもなく、それは私にとって聞き慣れすぎた言葉だったんだけど…


「…まぁ、手塚だしね。よく言われるけど」
「?どーいうコト?」
「何だい遥奈、リョーマにはまだ言ってなかったのか」
「言ってなかったっけ…?」

そう思い出すように言った、わざとらしく、

言った“それ”を、恐らく在校中の数多の生徒が知っているだろう。けれど、

「…何?」

リョーマは怪訝な顔、軽く睨むような挑発的な眼差しで、

「何か隠してんの?」
「…あのさリョーマ、」

逃げる必要はないと思った。

リョーマは大切な仲間だし、何より、


私は“それ”を笑って話せるくらい、あの頃より強くなれたと思っていたから。


「私が国光と一緒に住んでるのは知ってるよね?」
「うん」
「なんだい、だったら話は早いじゃないか。いいかいリョーマ、遥奈はね「スミレちゃん、

 リョーマにはちゃんと言うから」

「……そうか」

「?」わけが分からないといったように、不審がるリョーマを余所に、

「ねぇリョーマ、確かに私は手塚だけど…


 国光とは血が繋がってないんだ」


私は悪戯に、そして強気にニッと笑った。


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