【long】
□想詩
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「遥奈おはよー」
「おはよう」
遥奈の笑った顔を見ると、俺は一人密かに安心した。
時に泣き明かす夜があったとしても、一転の学園生活が始まればいつもの、笑顔のままで。
友人といる事で少しは気持ちが違うのかもしれない。そう思った。
「おはよう手塚」
「ああ、おはよう」
「今日もあの子と一緒だったのかい?」
「えっ?」
「もしかして彼女?」そう続けた同じクラスの彼は、何の嫌みもなく軽く笑って。並んだ隣からどこか可笑しそうに俺を覗き込んだ。
「いや…」
手前に歩いて行く遥奈と友人達、にこやかに笑うその横顔が目に入る。
「そんなんじゃないよ」
「ふーん、そう?」
だったら何だというのだ?というより、そんな風に勘ぐるのも俺達が一緒に登校する姿… 行動する姿を見ていたからだろうか。
それほど気にも止める事ない。そう思ったのも束の間──
「ねぇ手塚、あの子って…」
その後、彼はこう言葉を変え俺に言ってきた。
「もしかして双子かな?」言った後、いつもと違う表情を見せて、
「あの子も確か手塚だったよね?」
「……それが?」
「ああ、気を悪くしたらごめん」
「でも、」と続けた。
「キミ達の事、噂になってるみたいだよ。どういう関係なのか、って」
事態は一変した。
「手塚さんって、手塚君の家に住んでるんだって」
「え、双子?」
「じゃないでしょ。遥奈と誕生日違わない?」
「あー、手塚に姉妹いなかったはずだしなー」
「じゃあ何、もしかして異母姉弟とか…」
「マジで!?」
他愛もない事から背びれに尾ひれをつけて本人の知らぬ間に増殖し、吹聴されていくそれ。とはいえ、変に詮索する者もいなかったが…
「え〜?普通に居候とかじゃないの?」
核心には触れない。触れずとも、遥奈の心の傷を障るにはちょうどいい。
一学年に二人の手塚
それは、俺達一年の間で興味の対象… 恰好の話題になった。