【long】
□無辜
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「ハハ、まぁそう言うな。遥奈には…
余計な心配をかけたくないんじゃないかな」
……何で、そう思うんだろう。
そういう気遣いが欲しいわけじゃあないけれど。思っている事を言ってもらえないのは寂しい、なんて私が言える立場じゃないけれど。
国光がそういう人だと分かってはいても。だけど何でだろう、そう言ってもらえた事で少し、頑なな心が少しずつ和らいでいく。
「そういうお前は最近、元気ないんじゃないのか?」
「……え、」
「そう… そうかな」図星に一瞬たじろいでしまった、でも何となくはぐらかす気にはならなくて、
「何か、 寂しくて」
ぽろりと口をついた言葉に、大石くんは驚いた顔をした。
「国光がいなくて、何か…」
「そうか、…そうだな」
涙が出そうになる、心が揺らいで。
それを認めた事で自分がすごく小さな人間に思える。
寂しいと思う、その意味をまだ分からないでいるとしても、本当にそう思う。
いつになったら…
いつまで待ったら?
「いつも一緒にいたんだもんな。少しの間でも… 俺も寂しいよ」
「うん…」
強い、揺らぐ心を奮い立たせる存在。
当てのない待つだけの日々を、それでも前向きに進もうと思うのは、国光がいるから。ここに、そばにいなくても… 直向きに先を見据えて進んでいく姿を、追いかけて、一緒に歩きたいと思う。
「遠くに離れていても、俺達は一緒に闘っているんだよな」
そう、だから、
私も負けない、自分の弱さに飲み込まれそうになっても、飲み込まれてもそれさえも超えて。
きっと信じてくれている国光の気持ちに応えたい。だから心配なんて、
絶対にさせない。もう誰にも、
心配なんてさせやしないから…
「早く治して帰ってこい!って、言ってやればいいじゃないか」
「ええ? 言えないよそんな事、…絶っ対言わない」
そんな姿を想像してみて。呆れた国光の顔、または困ってしまうんではないだろうか。もしそう言ってみたとして、
後に、ものすごい後悔に苛まれる自分の姿を想像できた。あまりに恥ずかしく。
いつの間にか、そんな余裕も少しだけれど持てるようになっていたんだ…
「本当に、
お前らは似た者姉弟だな」
「? …ねぇさっきの、恥ずかしいから誰にも言わないでね」
「ハハ、分かってるよ」
優しく笑う、大石くんの眼差しは暖かくて。受け止めてくれた事で穏やかな気持ちになる、
もしも、大石くんが何か知っていようが私は… 気付かずにいるから。