その他3

□先生のこと、
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『……となり、こうなる。理解出来ていない奴は後で聞きにくるといいのだよ。……次、……』



―――はぁー緑間先生は相変わらず格好良いなぁ。
小学校中学校高校大学とモテモテだったんだろうなぁ。
色んな女性と色んな恋をしてきたのかな?
恋愛経験豊富、とか?

あぁーどうしよ。頭の中は緑間先生でいっぱい。
この頭は緑間先生を考えるための物なのかも。

―――ねぇ緑間先生、私緑間先生が好きなの。大好きなの。

先生が昔誰かと付き合ってたんじゃないかと思うと嫉妬してしまうの。
先生の大きな手が、他の誰かの小さな手と重なり合ったんじゃないかって、悲しくなるの。

先生の―――、全部が知りたいの。



『………こうなって、……あ、チャイムが鳴ってしまったのだよ。では、解散』



授業終了のチャイムが鳴り、もっと緑間先生の整った顔を眺めておけばよかったと後悔した。まぁ、毎度の事なのだから、癖みたいなものがついてしまっているのかもしれない。そう思うことにした。

そして私は教室のドアを開け、去ろうとしている緑間先生を呼び止めた。



「緑間先生っ!待ってくださいっ」


『ん?神崎か、どうしたのだよ』


「ここがわからないです!」


『あぁ、ここはこうで………わかったか?』


「はい、ありがとうございます」


『神崎は勉強熱心なのだよ。また何かあれば、いつでも聞きに来い』


「……はい///」



緑間先生は滅多に笑わない。いつも何かに真剣で、否、何事も中途半端が嫌いなのだろう。
私はそんな真面目なところが好き。
笑わなくても、たまに見せてくれる嬉しそうな顔が私には充分すぎるくらいだった。

緑間先生の姿を見るだけで、とても幸せになれるのに、最近はもっと、と思うようになってしまった。

いつも緑間先生の隣に居られたら、
緑間先生の温もりを感じることが出来たら、
緑間先生が私だけに笑ってくれたら、
溢れ出す欲望に、戸惑いも何も感じなかった。









「………ん?緑間先生?」



緑間先生が保健室に居るのが目に映った。
保険医の先生と、何話してるのかな――?
少し罪悪感はあったが、どんなことを話しているのかという好奇心に負け、そっとドアの隙間から、二人を覗いた。



『ねぇ、ミドリン。今更だけど、なんで教師になったの?』


『そんなこと、お前には関係ないのだよ』


『…ミドリンなら、きっとバスケ選手になると思ってたのになぁ』


『今更、だな。今こうして教師という職業にやりがいを感じているのだよ。それで充分だろう。では何故桃井は保険医になったのだよ』


『んー?ミドリンが教師になったから、かな?』



―――ねぇ、こういう会話って、親しい人とじゃないと、出来ないんじゃないかな。
保険医の桃井先生は緑間先生のことをミドリンだなんて恋人じみた愛称で呼んでいて、会話からしてきっと昔から知り合いで、緑間先生の色々なことを知っていて、

きっと緑間先生にとって、特別な女の子で―――、



私は零れ落ちる涙に唇を噛み締めながら、そっとドアを閉め走った。





先生のこと、大好きなのに…
(『なーんて冗談!あ、ミドリン、さっきから覗いてた女の子、ミドリンの生徒の神崎さんじゃない?切なそうな顔して、こっち見てたけど』)
(『神崎…が?切なそうな顔をしてこっちを見てただと?桃井、何が言いたいのだよ』)
(『んー?私達の関係、誤解されちゃったかもね』)
(『……それは、困るのだよ』)
(教室の隅っこで泣いていた私を、見つけてくれたのは緑間先生でした)

(20110331)
 

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