その他3
□先生、
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「せんせー、せんせー、ねぇ構ってよー」
『お前は早く日誌を書き終われよー。神崎が遅くなればなるほど、俺の仕事がはかどんなくなって残業に繋がるんスよー』
どちらともまるで気の抜けたような声を出し、相手に何かを訴えていた。
まぁ確かに私は涼太先生に迷惑をかけているのだけれど。
「じゃあ、頑張って書き終わるから構ってね」
『なに言ってるんスか、本当に困った生徒っスよ』
「生徒扱いしないでって言ってるじゃんっ」
『いやっ、実際生徒じゃないっスかっ!』
「先生の馬鹿、あほ、ちび、まぬけっ!」
『おっ、大きなお世話っス!』
涼太先生は私のこと生徒だとか言っときながらも私の気持ちを受け止めてくれてる(うん、違う意味でね)(実際振られたし)涼太先生にはお付き合いしている女性も、まさか結婚しているだなんてオチもない。だから私はこうして涼太先生に好きになってもらおうとアプローチしているのでした。
「先生はさー、私の年の頃なにしてたの?」
『バスケ一筋だった…かな。でも憧れていた人に、一度も勝てたことはなかったんスよ。憧れてしまっては越えられないと、わかっていたんスけどね…』
どこか遠くを見つめ、切なげな表情をしてそう言う涼太先生が、なんだかとても幼く思えて急に抱き締めたくなった。
でももしそれを見られたら、私よりも涼太先生に責任が問われてしまう。
だから私はそっと自分の手を涼太先生の大きな手に添えるように優しく握った。
「涼太先生、それは間違ってるよ。憧れてしまったら越えられないんじゃない、憧れるからこそ越えたいと思うんだよ。一度も勝てなかったのは…涼太先生が臆病だったからだよ。越えられないと決めつけていたからだよ」
涙が溢れるのは何故なんだろう…。それはきっと、涼太先生の抱えていた過去を知ることをできたから。そしてきっとその過去を優しく包むことができたから。少しは報われたかな?記憶の中の『黄瀬涼太』と、今目の前にいる『涼太先生』が。
「…ねぇ、涼太先生は好きな人いた?」
自分でも空気が読めていないことはわかっていたけれど、どうしても聞きたかった。知りたかった。
『……いたよ。誰よりも大事で、命より大切だった人が』
私には、その言葉でもう十分すぎるくらいだった。
「…ありがとう…ございます…先生。…じゃあそろそろ、帰る…ね。“バイバイ”」
再び溢れそうな涙を堪えて、私は立ち上がった。
「私、先生のこと大好きです。例え、先生が私を見ることがなくても。…でも、諦めます。先生には、その指輪がありますもんね」
涼太先生は一度目を見開いたけど、すぐに小さな笑みを浮かべこう言った。
『ありがとう、彼方』
初めて先生が、私を生徒として見ることをやめた。
先生、好きな人とか、います?
(私だけが知った先生を)
(独り占めなんてことは)
(あまりにも惨めすぎてできなくて…)
(20110618)
―――……
えーっと、わかりやすく説明すると、黄瀬にはつきあってた人がいたんですが死んじゃったんですよ。主人公が昔好きな人いた?って聞いて、今好きな人いる?と聞かなかったのは、黄瀬に大切な人がいると気付いたからです。
黄瀬が好きだからこそ、黄瀬に幸せになってもらいたかった。
黄瀬の幸せが、その人との思い出を守り続けることなんだと気付いたから。だから、主人公は身を引いたんです。
わかりづらくてすいません。この文章を伝えきれない私の文才のなさ(笑)