その他3

□先生の、
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『神崎さん、ちょっと後で手伝ってもらいたいんですが、いいですか?』

「はいっ!なんでもお任せください先生っ!」


大好きな黒子先生からのお呼びだし。例えそれがお説教でも雑用でも、黒子先生からならばなんでも喜んで引き受けます。

私はそれくらいに、黒子先生が大好きだったし、誰にも負けない自信はあった。
黒子先生のためなら、いくらでも尽くすし、なんでもしてあげるし、絶対この愛に勝るものはないって、いつからかそう思っていた程だった。

そんな考えを巡らせていたなか、先生に連れられ辿り着いた場所は、人気のない相談室だった。


『…えっと、早速なんですが神崎さん』

「はい」

『無茶…しないでくださいね』

「はい?」


黒子先生の言っている意味がわからず、私は首を大袈裟に傾げた。


『その傷も、その格好も、神崎さんには似合わないです』


傷も、格好も。
私は不良だった。だから体中の所々に目立つ傷はあるし、スカートだって短くして髪だって金髪に染めた。
似合わない格好したって、それが私の居場所だった。


「…先生は、全部お見通しだよね。でも、やめられないんだよ、今更」


もう慣れてしまった。
自分を偽ることに。
先生が本当の私を見つけてくれた。
それだけで、十分。


「先生、ありがとう。ごめんね…」


私は席をたった。溢れる涙を隠すことなく。
この雫が、先生への想いだとしたら、さよならしなくちゃいけないのかな―――?

先生と。


私は一度ドアの前で立ち止まり、くるっと先生に顔を向けた。





先生の、そういうところが好きでした
(ありがとう)
(さよなら―――)

(20110811)
 

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