その他3
□先生は、
1ページ/1ページ
『…このノートはなんじゃ』
突然ノートを突きつけられ、そう問われる。なんじゃ、と言われてもノートはノート以外のなにものでもないのですが…。
そう言おうとするより先に、仁王先生の口が動いた。
『このノートの汚さは、どういうことじゃ?先生に対する精一杯の反抗か?え?神崎』
「そんなんじゃありませーん」
『どの口がそれを言うか』
「いててて!」
私の頬を思い切り抓りながら引っ張る仁王先生。暴力反対!そう訴えるが、そうさせてるのはお前じゃ、と返された。
教師のくせに!同じ人間なのに偉そうにしやがって…!
『…まぁ俺はそこらの先生とは違ってそこまで厳しくしない。じゃから、反省文、三枚な』
安いもんじゃろ?語尾にそう付け足して、怪しい笑みを浮かべる先生。
なんでこんなやつが先生になれたんだろう。
そして私はなんでこんなやつが好きなんだろう。
□
かりかりとペンが文字を描く音がする。すらすらと埋まっていく作文用紙。
…なんて上手くいくわけもなく。
…先生の奴、私が国語苦手なの知っててこれにしたのか?
だったらとことん性悪。悪趣味!
「いてっ!」
『ほら、さっさと書く。なんで一マスも埋まってないんじゃ』
こつん、と頭を叩かれ、軽く説教される。なんで先生に監視されながらこんなどうでもいいことしなきゃいけないんだ。
まぁ確かに先生と二人きりというのはおいしいシチュエーションすぎるけど、だからといってそれについてくるのが反省文三枚というのはどうだろうか。辛い。
『…はぁ、』
『…全部書けたら、ご褒美用意しちゃる』
「ほんと!?」
さっきまで散々言っていたくせに、先生のこの一言で全てを忘れるようにして喜ぶ。自分でも思う。なんて現金な奴だろうって。
『ああ』
そう言って普段は見せないような笑みを浮かべながら、私の頭を優しく撫でる。
そんな先生の優しいところが大好きで、大嫌い。
「…やっぱいいや」
『えっ?』
「はいっ、書き終わった!」
作文用紙を先生に押しつけて教室から逃げ出すようにして出る。
―――期待、させないで。
ふぅ、と溜め息を吐いて、ふと思う。
―――勝手に期待する私が悪いのだけど。
先生は、ずるい…
((先生が好き))
(その不器用な想いは)
(届いたのかな…?)
(20111201)
補足
作文用紙に先生が好きと書いたのであって決して反省文を書いたわけではありません!(笑)