その他3
□先生は、
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私は一度、先生を見たことがあった。
それは先生が先生になる前のこと。私が中学一年生のとき、先生は高校生だった。
あのときの記憶として残っていることは先生は眼鏡をかけていたということ。そして、標準語ではなかったこと。
でも今は眼鏡はかけていないし、標準語。
そんな気にするようなことなんかじゃないのかもしれない。でも気になって気になって仕方ない。
「今吉先生」
『ん?』
「私と、会ったことあります?」
『いつも学校で会ってるよ』
「そういう意味じゃなくて、」
「…もっと昔に、先生がまだ先生になっていないときに」
『………』
そう言うと、先生の表情がみるみるうちに曇っていく。過去にトラウマがある…とか、嫌な思い出がある…とか、そういう類のものだろうか。
一人で黙々と考えていると、先生が口を開き始めた。
『…俺は、あの頃の自分が嫌いだった』
その言葉は私に向けてなのか、それとも自分自身になのか。
どちらにしても私は先生の話を聞きたいと思った。
『だから、全部捨てた。眼鏡も、一人称も、関西弁も、…バスケも』
…先生になにがあったのかわからない。
でも確かにあのとき、私は先生を好きになった。自分を捨てる前の先生が、すごくかっこよく見えた。
そう思うと、全て伝えたくなった。
「…勿体ないよ」
『え?』
「私…先生の関西弁好きだった。あの日、今でもずっと覚えてる。先生が、私を助けてくれたんだよ」
それは私が中学生になってまもない頃。
男子数人が私をいじめて遊んでいたとき、私は縮こまりながら「ごめんなさい」とだけ言い続けた。
誰も助けてくれなくて、
でも、遠くから声が聞こえた。
『おまわりさーん、こっちやで!』
『ちっ、いったん逃げるぞ!』
「…………」
逃げていく私を取り囲んでいた男子達。
その男子達とは別に、近づいてくる一人の男の人。
「…あれ、おまわりさんは……?」
『嘘や、うーそ。…というか、大丈夫か?』
「はい、ありがとうございます…」
『大丈夫やあらへんやろ。痛いときは痛いって言わな』
「……大丈夫、です。もうなれました」
『…強い子やな。ほら、これやるわ』
そういって差し出されたイチゴのキャンディー。私はそれを受け取った。
『ワシの大好きな飴ちゃんやから、大事に食うんやで』
「はい…」
あれ以来、おまわりさんを恐れたのか、男子達がいじめてくることもなくなった。
でもそれと同時に、助けてくれた人に会うこともなかった。
「私は、先生に救われたんだよ。先生が、私を救ってくれたんだよ。…だから、自分が嫌いだなんて言わないで」
私にはこれしか言うことができなかった。
今吉先生の気持ちも知らずに、いろんなこと言っちゃ駄目なんだと思う。
でもこれだけは言える。きっと先生は、昔の自分を取り戻してくれる。
そう―――
『…おおきに』
信じてる。
先生は、幸せですか?
(もうこれ以上)
(自分を責めないで)
(20111231)
ぐだぐだすぎてびびった←←
しかも今吉標準語とか(笑)