長編1

□05
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『さぁ始まりました!えーっと、ドキドキッ!不細工マネージャー来ちゃったよ全員集合っ!かーらーの丸いブタとプリピヨ仲直り仲良しこーよしの巻!司会は俺っ、切原赤也っス!』


「……ごめん、どこから突っ込めばええん?」


『嫌だな先輩、先輩は突っ込まれる方ですよ』


「死ね」


『赤也、その名前のセンスの無さはなんじゃ。というかプリピヨって俺のことか。俺のことなのか。殺すぞおら、あ?』


『仁王の言う通りだぜぃ、おい赤也俺のことなんつった?丸いブタ?おいおい気のせいだよなぁ?まさか自分から俺に殺されるようなまねするわきゃぁねぇよな?あ、もしかしてそのまさか?じゃあ殺してやるよ今すぐなあっ!』



自分のコンプレックス(仁王はコンプレックスなのか?)の名前で呼ばれたためか、2人ともとてもイケメンと騒がれる奴らの顔とは思えないほど怒りに満ち溢れていた。多分これがテレビドラマとかだったりしたら、きっと放送禁止だ。ぴー的なものが入るだろう。
このままだと、怒りのあまり切原君を殺しかねない。明日の新聞にのるぜ、中学生コンプレックスの名前で呼ばれ、バラバラ殺人事件…………いやぁーー。



「おっ、落ち着くんや!殺しはあかん!せめて誰にも迷惑かからんとこで殺れ!」


『先輩、それフォローになってないっス!!』


「ふはは、私だって不細工言われたん根に持っとるんじゃぼけぇ」


『俺のせいじゃないっスよ!』


「じゃあ誰のせいやねん。言い訳の一つでもしてみろやああ゛?」


『そーだそーだー』
『そーじゃそーじゃー』



私の言葉にブン太と仁王が続く。ははは、私に不細工言ったこと後悔させてやんよ。



『言い訳もなにもないですよっ!だって『俺がそう書いた紙を渡したんだからね』



切原君の言葉が遮られ、何処からか透き通った綺麗な声が聞こえてくる。……ん?この声…まさか、あはは、気のせーい。そう気のせい。



『はは、なんか現実逃避してるみたいだけど。あ、そっか。そういえばさっき散々言ってたよねー。殺すとか殺すとか殺すとか殺『『「すいませんでした」』』



幸村さんまじすんまっせーんん!!
いつもふざけあって喧嘩ばっかりしている私達が口を揃えてすいませんでしたと叫んだ。しかも綺麗な土下座つきで。
それでも幸村さんの黒い笑みは消えない。これ以上なにをお望みで。



『どーしよっか、んーどうしよっかな。取り敢えず丸井と仁王はグラウンド百周でしょ。あと彼方は取り敢えず跪け』


「ひっ、ひざまっ…」
『『百周っ!?』』



あまりの満面の笑みでそう言うもんだから、どう反応していいのかわからなかった。
だが私の頭の中には跪けと言われたことなんか気にも留めず、もっと気にかかったことがあった。



「…あの、いきなり名前呼びとかかなりキュンとしたんやけどっ!」


『………』



うん、今完全に引かれたよね。
まぁ事実だししょうがないじゃないですか!だってあんな満面の笑み(黒いけど)で名前呼びとかやばい。(私は名前で呼ばれたから喜んでいるんであって跪けと言われて喜んでいるわけじゃないよ!Mじゃないよ!そこんとこよろしく!)
そんなくだらないことを考えていると、肩を震わせて今にも噴き出しそうな幸村さんの姿があった。



『プッ、あはは!おかしっ!こんな子初めてだよ!』


「……へ?」



一体なにが可笑しいんだろうか。え、私?まじで?



「いや、私が可笑しいのは元々やん!今更言うことでもないやろ!」


『そういうところがおかしいって言ってるんだよ。言い換えれば、君は他の子とは違う。それが面白いんだよ』



他の子とは違う?この私が?
私は友達と意見がぶつかってしまったり、体育祭や海原祭などでクラスで討議するときも、一人だけ意見が逸れてしまうだなんてこともなかった。
それなのに、優しく笑う、でもどこか全てを見透かしているような強い幸村さんの瞳が私を見据える。



『君みたいな子が我が部のマネージャーでよかったよ。他の子はみんな、なんかこう良いところだけを見せようとするからね。ありのままが一番だよ』


「はぁ……おーきに」



幸村さんの言葉の意味はよくわからなかったけど、取り敢えず私はこの場所に来てよかったんだということが、みんなに受け入れてもらえていることが嬉しかった。少なくとも、反対している人はいないんじゃないかと思う。 自信過剰、とかそういうんじゃなくて、みんなの表情を見たらなにも疑えなくて。形だけの歓迎会じゃなくて、本当に心から歓迎してくれているような気がして。
胸の奥がじーんとなるようだった。





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