長編1

□07
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私の晴れやかなマネージャーデビュー。それは脆くも崩れ去った。昨日が初日だったのだが、私は部室に行かなかった。言ってしまえば、サボり、なのだろうか。でもしょうがないじゃないか。雅治と気まずいままで顔なんてあわせられるはずがない。でもこうしてしまったらもっと悪化してしまうことなんて、わかっているはずなのに。二つの考えが交差して、でもそれは一つになることはない。私の中で、なにかが雅治を拒否してしまう。嫌いなわけじゃない。寧ろどちらかと言われれば好きだ。
なのに、昨日、キスされて、気持ち悪いと思ってしまった。自分でもよくわからなかった。でもそう感じてしまった。やっぱり心の中にはあの初恋の人がまだ、いる。名前もなにもわからないけど、好きなんだ。今は、まだ。


「ん?」


突然携帯がぶーぶーと震えだした。着信を確認して画面を見る。あ、精市からだ。
…なになに、今すぐ屋上に来て?え、なにこれ。私、人生最大のモテ期!?


「………」


…こんな馬鹿なこと考えてないでさっさと屋上へ向かおう。遅れたら後でなに言われるかわからない。しかも昨日部活行ってないし…。

コロサレル!!






「幸村様昨日は申し訳ございませんでした」

『あ、そういえば彼方仁王に告られたみたいだけど返事したのー?』

「無視!?」


土下座して額地面に擦り付けて謝罪しているのにまさかのガン無視!?もしかして私が思っている以上にマジギレしてらっしゃるぅぅぅぅううう!???


『謝罪はいいからさっさと答えろ☆』

「逃げてきました…」


これ以上この人に一言でも逆らったら午後の授業を受けられる自信がない。今は、大人しく生きよう。うん、それが一番だ。


『へぇ。仁王かわいそー』

「…やって、どうしたらええんかわからないんやもん。…キ、キス、されて、気持ち悪いて、思ってしもたんやもん……」


精市には全てを打ち明けても大丈夫な気がした。いや、私自身が打ち明けたいと思った。
しばらく黙って俯いているとなにが可笑しいのか、精市がくすっ、と笑った。


『仁王の気持ちから、逃げてちゃ駄目だよ。もっと、周りを見て。…俺のことも、ね』


にこりと微笑んでそう言う精市。こういう笑顔にみんな惚れるんだろうな。今ならその気持ちがわかる。精市はたまに黒いときもあるけど優しいし常に全体を見据えてる。誰よりも人の気持ちに敏感で、きっと痛みってものを知ってるんだと思う。
そんな精市が、なんだかとても儚げに見えた。







待ってほんまどうしよう誰か助けてやちょっと無理ーー!!!

あ、すいません状況説明します。いやーやっぱり昨日もサボって今日もサボるってなわけにはいかないと思ったので、部室の前まで来たものの腕が硬直して動かない!つまりドアを開けることができない!どうしよう!こんな状態のときに雅治が来たりでもした、


「あ、」

『あ、』


ら。

…こうなりますよねー。あは、あはは…。


「………」

『………』


雅治と会うのは気まずいと思っていた。でもそれは私だけじゃなくて、多分雅治も同じ。それがわかっているからなのか、わかってしまっているせいなのか、お互いなにも言い出すことが出来ない。そして、この沈黙。

『仁王の気持ちから、逃げてちゃ駄目だよ。』

ふと脳裏に精市の言葉が浮かぶ。
私は。時が経てばきっとお互い忘れるって、そう簡単に考えてた。でも人から受け取った気持ちを、雅治が伝えてくれたこの想いを、そんなすぐに忘れられるはずがない。忘れたくなんか、ない。



「…校舎裏、行こっか」





(20111125)

ちょっと短いけどきります
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