長編1
□08
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「えっとー……」
…なにから話そうか。告白の返事?それとも、私自身の話?でも、どちらにしてもはっきりさせなくてはいけない。そうしないままでいたら、きっとお互いに後悔する。それだけは嫌だ。
「…あれから、ずっと考えてん。雅治のこと、」
「…好きだと思った」
「…せやけどそれは、親友として、なんやと思う…」
つらつらと言葉を並べていく。簡単に言ってしまっているようで、なんだか嫌悪感を抱く。嫌だ、こんなの。どちらかが報われないなんて。…でも、私が言えることなんかじゃないのに。
『………』
せっかく好きだと言ってくれたのに、気持ち返せなくてごめん。そんな気持ちでいっぱいだった。
…でもこのままじゃ終われない。これよりももっと、伝えたいことがある。今、伝えなくちゃいけないことがある。
「…そういえば、さ、私のこのネックレスの話、したことあらへんよね」
『え……?』
私はできるだけ平然を装って話を切り出す。
雅治はいきなりの話の展開についていけていないようだった。が、そこは敢えて気にせず話を進める。
「…私なぁ、ちっちゃい頃、両親なくして、独りぼっちになってん」
雅治はなにも言わない。きっと勘の鋭い雅治のことだから、口を挟んではいけない話だと察してくれたのだろう。それだと私も話しやすい。一呼吸おいて、また口を開く。
「こっちにおった親戚が引き取ってくれることになって、せやけどこの町と離れなあかんって思うと、悲しくて、公園で泣いとった。…そんときにな、慰めてくれはった男の子がおったんや」
『…それが、』
「うん、このネックレスをくれた人。せやけどな、私は、その男の子のこと、なんも知らんねん」
自嘲気味にそう言うと、雅治はなんで?とでも言いたげな顔をした。まぁそうだろうな。なにも知らない男の子からネックレスを貰うだなんて、そうそうある話じゃない。驚くのも当たり前だ。
「知っとることと言えば、テニスをしとるってこと。テニスバック背負っとったし。外見的なとこで言えば、緑のバンダナに猫目、そして、この十字架のネックレス。あのときから、ずっと、今も、あの人が好き」
苦い笑みを浮かべる雅治。でも、これだけじゃなくてまだ伝えたいことがある。というか、次に伝えることが一番重要なこと。これを伝えて、雅治がどんな反応をするかわからないけれど。
「…せやけど私、最低なんだ」
『………?』
「あの人のこと好きなんに、好きなはずやのに、雅治に好きって言われて、わからんくなった」
そう、わからなくなった。
あの人のこと、好きなのに、そう思っていたのに、ふとした瞬間に自信がなくなった。言い換えるならば、迷い。それは、あの人にも雅治にも失礼だと思う。
でも、雅治はそう思う私とは正反対だったようで。
『…それは、』
「ん?」
『俺にも少しは可能性が残っとるって、そう自惚れてもええんか?』
私はただ驚いて口をぽかんと開けていた。…いっそのこと、私を最低女だと突き放してくれたら、どんなに楽だっただろう。そうでもされないと私は、また、雅治の優しさに甘えてしまう。
『なら俺は、諦めん。そして…』
丁度二つしといてよかったわ。そう言いながら左手の小指に嵌められていた銀色に光る指輪を抜く雅治。
なにをするのか、そう思っていると、先ほど指から抜いたばかりの指輪を一つ私の前に差し出した。
『これ、俺とお揃いに、してくれるか?』
一瞬、なにが起こったのかわからなかった。
でも今感じた感覚に覚えがある気がして、私は気がつけば差し出されたそれに手を伸ばしていた。
が。
『俺がつけちゃる』
雅治は私の左手に自分の大きな手を添えて、私の左手の薬指にそれを嵌めようとする。
「雅治っ!」
おぉ、ぴったりじゃ、なんて一人で完結させて。私はそれに流されてばかり。
『ええじゃろ、これくらい。予約じゃ。
…俺は必ず、そいつから彼方を奪ってみせる。いつか俺が好きだって、そう言わせちゃる。
宣戦布告じゃ』
私はただ立ちつくした。
そんな私達を、ブン太が見ていたなんて知らずに。
(20111127)
仁王、やらかしましたね(笑)
てか文才ください←