長編1

□09
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次の日の朝。
テニス部はいつものように朝練をしていた。
それと同時にいつものように遅刻してくる仁王。皆は気にすることもなく練習に励むが、丸井はその姿を見つけ、突然仁王の元へと走り出した。


『おい、』

『ブンちゃんか、おはようさん』

『挨拶なんて、どうでもいいんだよ』


いつもと違う様子の丸井に、仁王は思い当たる節があった。


『…まさか』

『なんで…なんでなんだよぃ!』


丸井は仁王の胸ぐらを掴んで、今にも泣き出しそうなほど切ない表情を浮かべた。


『…仁王も彼方が好きなら、そう言えばよかっただろ!?こそこそやってんじゃねぇよ!本当に好きなら…俺と正々堂々、勝負しろよ!』


コート上に丸井の怒号が響いた。
周りの人達の視線は一斉に二人に集中し、レギュラー陣は顔を見合わせた。


『言いたいことはそれだけかの?』

『仁王っ、てめぇっ…!』

『二人とも、喧嘩なら余所でやってくれないかな?周りに迷惑だよ』


表情にはあまり出さないが、様子から怒っているのだと見てとれる。
幸村が止めに入ったため、この場は一応収まったが、その後のクラスでの雰囲気は最悪だった。






昼休み。
私は突然精市に呼び出された。屋上でご飯を食べようとのことだった。断る理由もなく、私は二つ返事でOKした。


『…クラスでの二人はどう?』

「掴み合ったりとかはしとらん。せやけど…」

『けど…?』

「間に挟まれるこっちの身にもなってもらいたいわ」


二人からの恐ろしいオーラが私を包み込むようで、授業なんかに集中できたようなもんじゃない。
二人が今喧嘩をしているのはわかるけど、なにが原因なのだろうか。昨日まで普通だったのに…。聞きたいけど、聞けない。


『なんで二人がああなったんだろう、って顔だね』

「ははっ、バレた?」

『…まぁしいて言うなら、二人は自分の気持ちが強すぎて、周りのことなんてちっとも考えてくれはしないってとこかな?』

「?」


頭上にはてなマークを浮かべていると、精市は蓮二みたいな笑い方をして、急に顔を近づけてきた。


『こっちだって、我慢してるのにさ』


その言葉が合図であるように精市の顔がどんどん近づいてきて、私はなにがなんだかわからなくなる。
私は精市を突き放すこともできなくて、顔を見られないように立ち上がった。


「…あ!わ、わたし、用事あるんやった!じゃ、また放課後!」


私は逃げるようにしてその場から走り出した。





『あーあ、逃げられちゃった』


幸村は胸に手を当て、自嘲気味にふっ、と笑う。


『…我慢、してるのにさ。無自覚すぎるよね』


それは彼女に対して呟いたのか、それとも自分自身になのか。

それは誰にもわからない。





(20111217)

みじかっ!
次回は急展開(?)です!
 

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