長編1
□二人と心情
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『…というわけで、よろしくね彼方ちゃん!』
「どういうわけで私がよろしくされなきゃいけないんでしょうか」
『よろしくぜよ、彼方ちゃん!』
「馴れ馴れしいわっ!」
なんでこんなことに…。ああ、そうだ。ついさっきのことだ。本の補充をしていたら、店長に呼ばれて、仁王君がいて、いろいろ教えてあげてね。って言われて。…って私もなに納得してるんだ。
「なんで私なんですか!!」
『だってさー、仁王君彼方ちゃんのこと気に入ってるみたいだし、それに他の子に任したらどうなるかなんて目に見えてるし』
「……店長が私を信頼してくださるのは嬉しいですけど…」
『なら、ね?お願いっ』
「…はあ、」
日頃お世話になっている店長には、なんだかんだで頭があがらない。私は仕方なく承諾すると、仁王君を倉庫へと案内した。
『だだっ広い倉庫やの』
倉庫に着いて第一声がそれかよ。突っ込みたくなったが、その気持ちを抑えて私は説明をし始める。
「…ここで、足りなくなった本を補充するの。もし全部なくなったら、店長に報告して。あとはどんなジャンルの本がどの位置にあるのか、出来るだけ記憶すること。手が空いたときは、逆さになっている本をちゃんと戻したりとか、適当に時間潰して」
『結構大変なんじゃのー』
「慣れたらそうでもない。仁王君には出来ればレジをやってもらいたいけど、そうするとここがコンサート会場になっちゃうからごめんね」
『俺は彼方ちゃんと一緒の仕事ができて光栄なり』
「…へいへい」
こんなノリで大丈夫なんだろうか。
仁王君も、私も。
「…あと、私はいいけど、他の人達には敬語を使うこと」
『ちゃんと使っとる』
「なんで私だけ!?」
てっきり他の人にもタメ語なのかと。
『彼方ちゃんと仲よぅなりたいから』
「………」
不覚にもときめいたのはこの際黙っておくことにしよう。
―――でも、私はこういう気持ちになるたび、思う。仁王君は私をからかって遊んでいるだけなのではないかって。どうしても私をからかっているような口調に聞こえてしまうのだ。
だから私は軽くあしらって誤魔化すことしかできない。
そんな自分が、嫌だ。
「…じゃあ、もう戻ろっか」
『待ちんしゃい』
私は仁王君の言葉に振り返る。
『メアド、教えてくれんかの?』
「……うん」
気がつけば、そう言っていた。
(20120125)
……うーん←