長編1

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彼方は今日も安らかに眠っていた。
誰が話しかけようとも、その瞼が開かれることはなかった。


『…なぁ、ブンちゃん』

『………』

『ちょっと話したいことがあるきに。外にでんかの?』

『…わかった』


誰も俺たちを止めようとはしなかった。






ブンちゃんを連れてやってきたのは病室を出てすぐのロビーだった。無言でソファーに腰掛け、俺は口を開く。


『お互い黙り込むんもあんま好かん。じゃから早急に話す』


ブンちゃんは黙って頷いた。


『まず最初に聞きたいんじゃけど、彼方の首にネックレスがあるん知っとる?』

『そういえば、あったな』

『あれな、初恋の男から貰ったんじゃって』

『っ!』


そりゃ驚きを隠せないだろうな。俺だってそうだ。


『しかも今もそいつのこと想っとる』


俺達なんかが、入り込む隙間なんてない。


『…俺はそいつから彼方を奪ってみせるなんて言ったけど、正直自信なんてない。意識が戻らん彼方にずっと付き添ってやるブンちゃんにも、俺は負けとる気がする。じゃから、彼方に言う。諦める、って。そう決めたんじゃ』

『仁王はそれでいいのかよぃ?』

『…あぁ』

『ならその指輪渡せ』


…………。そうか。彼方を諦めるって、こういうことなんだ。
この指輪を今ブンちゃんに渡さなきゃ、俺は一生彼方を諦められない気がする。渡さなきゃいけない。頭の中ではわかっている。わかっている、のに…

どうしても渡すことを躊躇ってしまう。


『………』

『渡せないんだったら、そんなこと言うなよぃ!』

『ブンちゃん…』

『俺だって自信なんてない。お前も彼方が好きだって言って、正直焦った。でもきっと…俺達似てるんだ。同じ女を好きになったんだから。どっちが先に好きになっただとか、もうこの際どうでもいいんだよぃ。
…初恋の男?上等じゃねぇの。ライバルが多い方が燃える。仁王も、そうだろぃ?』


ブンちゃんの言葉で、目が覚めた気がする。

俺は、自分のことばかり考えて。
自信がないってのを言い訳にして。
いつでも逃げてばかりだった。
逃げないって決めても、結局どこかで自分が傷つかないように考えてる。
そんなんじゃ彼方を守れなくて当然だ。

…もっと強くならなきゃいけない。
彼方を守るためにも。


『…ああ、そうじゃな…』


そう呟いた瞬間、彼方の病室から幸村が走ってくるのが見えて思わず立ち上がる。


『二人とも!彼方が目を覚ましたよ!』


『……え?』










『幸村…』


三人で病室に戻ると、真田が切なげな表情で幸村に言う。


『どうしたの?』

『それがだな…』


「はじめまして」


…はじめまして?なにを言っているんだ彼方は。
ちらり、と幸村は真田を見る。


「あなたがたは、誰ですか?」

『記憶喪失、みたいなんだ…』





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うおーなんというシリアス←
ちゃんとギャグに復活しますからね!そのうち!←おい
 

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