長編1
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次の日。
私の元に来た客はこれだ。
ブン太、他のレギュラー陣。これならまだいい。でもなんで、私を突き落とした子達まで来てるんだい?え、どういうメンツすか。
『本当にごめんなさいっ!』
色々考えてたらまさかの謝罪。一斉に頭を下げる女の子達。ええええ、なんか私が悪い人みたいになってるうううう!
「…いや、大丈夫、やし…」
『でもっ…!』
「大丈夫やって!私、ぴんぴんしとるし。…そない謝られたら、こっちの立場ないし」
『………』
「だから、な?もう帰ってええで」
『…本当に、すいませんでした』
最後にもう一度謝罪をして、女の子達は帰っていった。…意外と律儀。あら失礼。
『あれでよかったのかよぃ?』
ブン太の思いがけない言葉に、一瞬反応に困った。
「え、ああ、うん。指輪、見つけてくれたみたいやし」
『ほんっとお前は呆れるくらいお人好しだな』
「褒めてもなんもでぇへんし」
『…そう返すか』
てか実際、結構酷いこと考えてたし(自覚はある)。
「…そういえば、明日明後日、試合だよね…」
『うん。明日は初戦。勝てば二回戦も。そしてそれに勝てば明後日は三回戦目かな』
「…そっか」
結局私は、なにもしてない。
ドリンクも作ってない。タオルも洗ってない。みんなの応援だって、してあげられていない。マネージャーの役割、何一つ果たしちゃいない。
今回も、また。
私はただただベッドの上でみんなの勝利を祈ることしかできないのだ。
「…堪忍な。私…まだ退院できひんから、明日も明後日も、なんもできひん…」
『気にしないで。俺達は必ず勝ち進んでみせる。だから、準決勝からサポート頼むよ』
「……ん」
精市の優しい言葉が、また私の涙腺を壊す。
私はこんな優しい人達に出会えてよかった。この人達なら優勝できる。私はそう信じてる。
「…あっ、そうだ!」
『?』
「みんな、手だして」
その一言で、みんなは私に手のひらを見せるように差し出す。
「はい、目瞑って」
私はそのごつごつとした手のひらに、一人一文字ずつ、メッセージを書いた。
「今は見ないで。あと、その文字を見せ合うんは明日」
『?わかった』
「みんな、私に優勝旗、持たせてよね」
『気がはやいっつーの!』
「いいやろが!」
最後にみんなと笑いあって、ばいばいって手を振った。
みんなの後ろ姿はなんだか近くて遠いような、そんな感じ。
でもきっとその背中に、王者っていうスローガンを掲げてるんだろうな。
「…頑張れ」
どうか、みんなの努力が報われますように……。
(20120114)
相変わらずギャグに走ったりシリアスに走ったり。