長編1
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二日後の夜、精市から電話があった。
『彼方、調子はどう?』
「めちゃ元気!」
『そっか、それはよかった』
「…で、大会の結果は…って、聞くまでもあらへんか」
『ふふ、まあ一応言っておくと準決勝進出かな?』
…準決勝進出、かぁ。なんだか実感が湧かない。まあ当然なのかもしれない。私はなにもしていないし。そう思うとなんだか悲しくなるけれど事実なのだ。今更隠したところでしょうがないだろう。
『そういえば…』
□
「退・院・やあー!」
『うるさいよ』
「…すんません」
『謝るくらいなら誰にでもできる。行動で示してよね、行動で。結局、なにもしてないんだから』
なにもしてないんだから…なにもしてないんだから…してないんだから…ないんだから…(エコー
「…ワカリマシタ」
退院早々、魔王様は君臨なされるのですね…。
誰も退院したことに触れてこないことに悲しさを覚えながらも、私はドリンクを作った。
そりゃもう、これでもかってくらい。
『…で、お前はなんのためにここにいるの?』
「ミナサンノサポートヲスルタメデス…」
『俺、こんなにドリンク作ってなんて頼んだ覚えないなぁ!』
「申し訳ございませっしたあああああああああああああ!!!(土下座」
『まったくだよ』
いや、確かにドリンク100個も作っちゃったのは悪いと思うよ?でも何故にそんな上から目線!?うーえーかーらー○リーコー的なノリですか!?
…落ち着け。落ち着くんだ神崎彼方。これ以上突っ走ったら幸村様の読心術かーらーの黒魔術で確実に殺られる!
『わかってるじゃないか』
「…あは、あはははは…」
助けて…まじ誰か助けて。
…っておーい!雅治もブン太も空見てんじゃねーよ!なにが『今日は空が青いなー』だよ!いつものことだわ!
…だから落ち着け。
「…………」
まず物事を整理しよう。作ったドリンクは100個。今日レギュラーと平部員に渡す分が52個。残り48個…。
どうしようか、そう考えていると赤也の純粋無垢な瞳と目があった。
そうだ、これだ!
「…ワカメって水含むと増殖するらしいで…」
『ちょ、彼方先輩っ?!』
「ワカメ…ワカメ…ワカメェェっ!!」
ブシャッ
『…………』
これもなにかの運命なのだよ赤也。
「そのうちワカメも増殖するやろ」
『ワカメ食い放題でも嬉しくねぇけどな!』
『「ワーッハッハッ!!」』
『…なんで先輩達までかけるんスか…』
『面白そうだったから☆』
『『『同じく』』』
弦一郎、比呂士、ジャッカルは幸村様が強制でやらせました☆
『…ぐすっ』
そしてそんな常識もなにもない集団の標的とされた悪魔天使赤也君は、とうとう泣き出してしまった。
そんな赤也を見ていてもたってもいられなくなった私は、赤也に思い切り抱きついた。私の唯一の癒やし…マイエンジェルよ!
「あーもー赤也可愛すぎーっ!」
『『あーっ!!』』
「?」
『赤也っ、今すぐ彼方から離れろぃ!』
『なんで俺!?』
『とにかくどきんしゃい!』
『先輩達のせいで余計無理っス!』
「ちょ、痛い痛い痛い痛いいいいいいいいいいい!!!!」
赤也に離れろとか言う前に自分達が離れろぉぉぉぉぉおおおお!!!腕!腕もげるから!
『赤也あああああああ!』
『丸井先輩いいいいいいいい!』
『ワカメエエエエエエ!』
『詐欺師いいいいいいいい!』
「もう黙れやああああああ!」
バシャッ
『『『「…………」』』』
『よしっ、これで全部空になった。明日は十時に現地集合ね。はいかいさーん』
『『『「…………」』』』
精市に見捨てられた私達はそのまま帰りました。
□
『ねえ蓮二』
『なんだ?』
『誰かのために一生懸命になれる馬鹿正直ってどう思う?』
『…嫌いじゃないな』
『そういえば…あのメッセージ』
「あ、ちゃんと繋げて読んだ?」
『常勝立海、でしょ?』
「もういっこあったやん」
『…もう一つ?』
「おん、いつもありがとう、って」
『…俺は、結構好きだな』
(20120126)
私にギャグは無理だと諦めたくなった瞬間←