長編1

□動揺と決意
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このもやもやした感覚はなんだろう。
胸が疼くような、そんな感じ。

そんな思いを抱えながら私は本棚を整理する。


「…はあ、」

『なにかお困りかな彼方ちゃん?』

「…店長」


腰に手をついて、覗き込むように私に笑いかける。そんな店長は私のなにもかもを見抜いてしまっているような気がした。


『私の可愛い後輩の悩みなら、なんでも聞くわよ』


ぽん、と肩に手を乗せたかと思うとすぐに踵を返してレジの方に向かっていく。私はそんな店長の後ろ姿を見つめながら、その片隅で仁王君のことを考えていた。









『で、それがなんなのかわからない、と』


結局店長の言葉に甘えることにした私は、仕事が終わると近くの喫茶店に店長を呼びだした。目の前で肘を突きながら私の話を聞く彼女は、なんだか呆れかえっているように見える。


「…なんだかすごく胸が痛くて、食欲もなくて、わけもわからないのに…なんだかすごく、泣きたくなるんです」

『…はぁ、ここまで鈍かったとは…』

「?」


呆れるを通り越して苛々してるように見えるのは私だけだろうか…。

しばらく店長の顔をじとっと眺めていると、店長はゆっくりと口を開いた。


『…同じこと仁王君に言ってあげるといいわ』

「え?」

『私が言えるのはここまで。じゃ、帰ろっか』

「ちょ、店長!」


そそくさと私を置いて行ってしまう店長。
そんな店長は私に仁王君に同じことを伝えろと言った。伝えたらどうなるかなんてわからない。無意味かもしれない。

でももしなにかが変わるなら。
私はそっちに賭けたい。


「…もしもし、」

『…彼方ちゃん、か?』

「うん。あのね、話したいことがあるんだけど、今から駅前の公園に来てくれないかな?」


ただ電話越しだからかもしれない。でも、耳に聞こえてくる仁王君の声は、いつもとは違うような感じがした。





(20120211)

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