長編3
□02
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教室に戻ると、赤也が怒っていた。なぜ。
「なに怒ってんの」
『べっつにぃー?』
「まじ話せし」
赤也が不機嫌になると非常に面倒くさい。こうやって聞くと答えないくせに逆に聞かないとそれはそれでキレる。やっぱり先輩に投げつけたキャベツ赤也に投げればよかった。先輩ごめん。
『…お前が、悪い』
「なんでそうなる」
『はぁ!?お前、自覚なしかよ…』
「?」
自覚なしと言われましても。知らないは知らないし。てか回りくどいな。さっさと話せよワカメこら。
『はあ…さっき、俺が言ったこと、覚えてっか?』
「はぁ!?お前、自覚なしかよ…」
『違ぇよ!しかも声まねすんな!お前が、柳生先輩のとこ行く前』
比呂士さんのところに行く前…?…なんだっけ。
「ごめん、忘れちった☆」
『…お前のそのお気楽さ、たまに羨ましいわ』
「失礼な」
『…まあいいや。で、俺言ったよな。休み時間、さっきの話の続きしようぜって』
さっきの話…頭に残っている記憶を探し出してみる。が、そこだけ記憶がすっぽり抜けているらしい。新種の病気かも。今日病院行こうかな…。
『お前の大好きなきゅうりの話だよ!!』
「…あぁ!それだよそれ!」
思い出した。
赤也の話はこうだ。赤也の部活の先輩に、きゅうりが好きな人がいる。
はは、同士は大歓迎だぜ。
「もうちょい詳しく」
『…あの人、めっちゃモテんの』
「そんなこと聞いてねぇよ」
『まぁ待てって』
赤也の分際でもったいぶるだなんて。きゅうり目に突っ込んだろか。あ、きゅうりに失礼だから止めよう。
『あの人は女に興味ない。というか、色んなことに滅多に興味を示さない。なのに最近…口を開けばきゅうりだぜ?しかもさん付け』
「さん付け…だと?」
私よりも遥かにきゅうりを敬う気持ちが強いとみた。これは…強敵だ。
『しかもよ、さん付けに付け加えてきゅうりさんのあの美声に惚れたぜよ、とか言ってんだぜ?もう爆笑!』
美声…まさか、きゅうりの心の声を聞き取ることができるというのか…?そんな馬鹿な。きゅうりの美学は奥が深い。是非とも、その人に会ってきゅうり学を学ばせていただきたい!
「赤也!」
『いきなり大声出すなよ』
「その人の名前は!」
『無視かよ。…まあいいや、名前?
仁王雅治』
(20120115)