長編2

□2music
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「高尾君、かぁー……」



私がそう呟くと夢は変な目で此方を凝視してくる。
なにか変なことを言っただろうか、と少し不安になったが、私は平然を装った。だが夢はそんな私にも疑問を抱いたのか、先ほどよりも顔を近づけてきた。



「な、なんだよ夢」


『いや、音楽にしか興味が無かった彼方がいきなり男の名前を呟くもんだから熱でもあるんじゃないかと思って、』


「ははは、噛まないでの長文どうも…」



苦笑いを浮かべ夢の顔をちら、と見るがいかにもそれには気づいていないようだ。全く呆れるよ、田城夢の鈍感っぷりには。



『もしかして、高尾君のこと好きとか!?』


「ぶっ!」


『ちょ、汚い!』



飲んでいた牛乳を思わず吹き出し、夢にかけてしまった。



『うわー、エロ』


「黙れ変態」



牛乳ぶっかけられて平然と下ネタ考えてる私の親友を本気で軽蔑した。
まぁこんな奴ということは始めからわかっていたけれど。



『あっ、噂をすれば。高尾くーん!』


『おっ、田城じゃん。てか汚っ』


『ま、そういうなって!』



だんだんと近づいてくる高尾君の姿をただ眺めていた。
高尾君の隣にいた長身で緑色の髪の毛の男の人も高尾君と一緒に此方へと向かっている。



「うわぁ……」



高尾君がかっこいいのはわかる。
でも、この隣の人もきっとかっこいい。
女の子が憧れるような長い睫毛。
それを引き立たせる整った顔。
明らかにさらさらな髪の毛。
人とは違う憧れるような髪の色。
そして、すらっと伸びている身長。
なんだか全てが完璧で、欠点が見つからなかった。



「かっこいいね、君」



私はそのイケメン君に指をさした。すると驚いたような表情で一度私の顔を見てから目を逸らし眼鏡をくいっと上げた。



『なんなのだよ、君は』


「ん?人間」



馬鹿にするように言ってみたらイケメン君は眉間に皺を寄せた。



『そんなことを聞いているのではない。君の名前はなんなのだと聞いているのだよ』


「いやいや、人の名前聞く前に自分の名前を名乗るってママに教わらなかった?イケメン君」



さらに眉間に皺を寄せて、またまた眼鏡をくいっと押し上げる。はは、面白いな。



『緑間、真太郎なのだよ』



私はその名前を聞いて、つい先日高尾君に聞いた名前を思い出した。
そうだ、確か
『みどりましんたろう』
だった。



「あぁ、あの緑間君?」


『あの、とはなんだ』


「いや、この間高尾君に教えてもらった緑間君か、と思って」


『なにを言ったのだよ高尾…』


『いや、ただ名前を教えただけだよな?!』



焦る高尾君を見て、なんだかこのまま肯定を示すのも面白くないなぁとか思ったりした。



「…まぁ、色々だよ緑間君」


『おいっ!彼方ちゃんっ!』



なんでだろう。このメンバーだと、時間を忘れてしまいそう。時間だけじゃなくて、全てを忘れて笑っていられるような気がする。



「ははっ、ごめん。緑間君、冗談だから気にしないで」



そう言うと緑間君ははぁ、と溜め息をついて、高尾君は少しほっとしたような表情を見せて、夢はただ微笑んでいて。
なんだかすごく和む。



「じゃ、そろそろ戻ったほうがいんじゃない?もう五分もしたらチャイムなるし、まだ昼飯食い終わってないし」


『そうだな。…あ、彼方ちゃん手、出して』


「?」



私は言われるがまま、手のひらを上に向けて高尾君の前に差し出した。
すると高尾君はどこからかマッキーペンを取り出しきゅっ、きゅっ、と音をたてながら私の手のひらになにかを書いていく。
が、すぐに書き終わり、高尾君はよしっ、と言ってにこりと微笑んだ。



『じゃーなっ!また遊びにくっから!』



高尾君は笑みを浮かべて手を振ってくれたけれど、緑間君はふん、と言いたげな表情ですたすたと歩いていってしまった。



『ねぇ彼方ーっ、さっきなに書かれたの?』


「わかんない」



そう言って手のひらを夢に見せた。



『これって、高尾君のメアドじゃない?!やるじゃん彼方っ』


「メアド…」



なんで高尾君は私に教えてくれたんだろう。よくわからないけれど、胸の奥になにかを感じた気がした。

取り敢えず、家に帰ったらメールしようっと。





(20110709)
 

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