長編2
□3music
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家に帰ってすることと言えば。
そう問われれば私は迷わずこう答えるだろう。
「コーラの一気飲み!」
『バカっ!違うでしょ!』
隣にいる夢にそう突っ込まれ、私は頬を膨らます。コーラの一気飲み以外になにをしろと言うのだ!そんな私に夢はこう言った。
『高尾君にメール、するんでしょ!』
「あ、」
忘れてた。そう続ける私。でも実際、早くメールしたくてしょうがなかった。
ああっ、今すぐ家に帰りたい。こんなことになるんなら毎日学校に携帯持ってこればよかった。
『…毎日ギター背負って遅刻してくるくせに、携帯だけは持ってこないんだからっ!』
「いやぁー、携帯ってちっちゃくて忘れちゃうんだよねー」
『忘れません!』
「………」
今時の女子高生、とでも言うべきか。
そうかそうか、私は今時の女子高生ではないのか、そうかそうか。
「……はぁ」
『ほら、もう彼方ん家だよ。じゃーね』
「うん…」
□
私は携帯を片手に、便器に座って黙々と考えた。いや、トイレってさ、考え事とか集中とかしたいときに便利だと思うんだよ。無音だし、一人でいられるし。うんまぁそんなどうでもいいことはさておき、なにを打てばいいのだろう。最初だし、こんにちは?よろしくお願いします?
…取り敢えず、なんか送ろう。
【\(^-^)/】
送信、っと。
普段メールすることなんてないからなんだか新鮮。しかもこんなになに送ればいいのか悩むなんてやっぱり高尾君だから?
…そんなことない。私は必死で頭を振った。
そうこうしているうちに、携帯が鳴った。この感覚は久し振りだ。
【変な顔文字(笑)彼方ちゃんだよな?登録しといたぜ】
うん、私も登録したよ。そう打って、返信すると、また携帯が鳴った。早い。
【あのさぁ、いきなりなんだけど、明日休みだし、真ちゃんも誘って、映画行かない?】
いきなりのお誘い。これなに、本当にこんなことがあっていいの?一人でわーわー騒いだ。当然ながら、パニック状態。騒ぎすぎて携帯を落としそうになったので、一度深呼吸をする。すーはーすーはー。よし、もう一度携帯を見よう。
「えーっと、明日休みだし、真ちゃんも誘って、映画行かない?うん、そう書いてあるよねー、そうだよねー…」
一字一句、間違いない。私は高尾君に映画に誘われたのだ。男子と出かけるなんて、初めてのことで、しかも映画なんて何年ぶりだろう。ギターを買ってもらって自分で作詞作曲するようになってから、そのことに夢中になりすぎて周りのことなんて見えなかった。どうでもよかった。だから、友達との会話の中でも一人だけついていけず、いっつもクラスで浮いていた。そんな私が、男子と映画?自分でも有り得ないと思う。
でもせっかくのお誘い。幸い明日は用事はない。どうしようか、そう考え、やっとの思いで、【うん。】と返した。
(20111118)