長編2

□4music
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「ねぇ夢、こんな服装で大丈夫かな?」

『大丈夫ってか寧ろ可愛すぎるくらいよ!いつの間にそんな服を買ったの…親離れしていく子のようだわ……』


いつから夢が私のお母さんになったのだろう。まあこの際この服はお母さんが買ってきたことは黙っておくこととして、私はあはは、と適当に笑っておいた。


「あ、高尾君と緑間君」

『彼方ちゃーん!田城ー!』


私達の名前を叫びながら、しかも大きく手を振りながら近づいてくる高尾君。その後ろでくいっ、っと眼鏡を押し上げながら緑間君が近づいてくる。
うわぁ、二人とも私服かっこいい。高尾君は少しだぼついた服を着ていて、緑間君は一言で表すなら和みたいな感じの服装だった。


『二人とも、ファッションセンスいいねー』

『田城に褒められても嬉しくねぇっ!』

『なんだって!?』

『なんだと!?』


どうでもいい喧嘩を始める夢と高尾君をよそに、私は緑間君に寄っていった。


『?なんなのだよ』

「緑間君って映画行くんだね。そういうイメージないから」

『…無理矢理連れてこられたのだよ』

「…納得」


緑間君も大変なんだね。そう言って、緑間君の肩を叩いた。うーん、背が高いから届きにくい。


『はーいそこの二人離れるー。さっさと行こーぜっ!』

「…えっ、ちょっ!待っ、」


高尾君に手を引っ張られ二人で先を行く。後ろの二人をちらちら見ながら引っ張られるも、止めてくれる気配はない。
これじゃあ四人で来た意味がない。






なんだかんだ着いた映画館。今日見る映画はラブコメだそうだ。
高尾君は私の腕をまだ離してくれない。夢と緑間君に助けを求めるも、ことごとく無視される。なんだよ、二人もなんだかんだ言ってラブいのかよ。


『俺ここっ、彼方ちゃんはここねっ!』


言われるがまま、私は高尾君が指を指した場所に座る。席は左から順に高尾君、私、緑間君、夢。果たして交互にする意味はあったのだろうか。


そうこう考えているうちに映画が始まった。その瞬間、私の手に誰かの手が重なった。高尾君のほうを見ると、少し照れたようにはにかんで、しーっ、と言われた。秘密、という意味だろうか。これは二人の秘密。私はなんだか全身が熱くなるのを感じて、高尾君は好きな人いるのかな?なんて今更ながら思った。






二時間近くの映画を見終えて、近くのマックで昼食を済ませる。
結局、手を重ねられてからドキドキしっぱなしで映画どころじゃなかった。勿論内容もなにも覚えていない。気づかれないよう、そっと溜め息を吐く。


『次はさぁ、何処行く?』


高尾君の問いかけに、私は少し昨日考えていたことを思い出した。生まれてから一度もプリクラというものを撮ったことがない。夢とも撮ったことがない。せっかくの機会にプリクラというものを体験してみたいなぁ、なんて思ったりもしたのだけれど、なかなか言いづらい。けど、このまま沈黙が続くのも嫌なので、言ってみることにした。


「…私、プリクラを撮ってみたいんだけど…」

『おっ、いいな!撮ろーぜ!』


私達は勝手に盛り上がっていた。そんな私達を見てか、緑間君ははぁっ、と小さく溜め息を漏らす。夢は―――、


「…えっ?」


夢は、今にも泣き出しそうな顔をしていた。そうかと思うと突然表情をキリッと変え、私達にこう言ったのである。


『あっ!私映画館に忘れ物して来ちゃったかも!…緑間君ちょっと付き合って』


緑間君の腕を掴んでそそくさと行ってしまう夢。
私達は、黙って見ていることしかできなかった。






『……おいっ』

『…………』

『おいっ、田城!』


俺が怒鳴ると、田城は足を止めた。


『……ごめんね緑間君。連れて来ちゃって、』

『いや、』


それより……。そう口を開こうとした瞬間、田城がこれでもかというほどに唇を噛み締めているのがわかった。その唇には、うっすらと血が滲んでいる。


『………っ』

『…何故我慢などするのだよ』

『………』

『高尾が、好、』

『言わないでっ!』


突然口に手を当てられ、どうすることもできなくなる。しようと思えば簡単に手を退けることだって出来たけど、俺はなにもしなかった。


『…高尾君にも、彼方にも、絶対に…言わないで…』


きっと田城は、ずっと高尾のことが好きだったのだろう。でも、親友が高尾を好きなのかもしれないことを知り、更には高尾までもが親友を好いていることを嫌でもわかってしまった。
何処にも行き場のない気持ちを、ただ自分の心の中に押し込んで。

俺はなんだか自分が自分でなくなるような感じがした。泣いている田城を見て、俺はその小さな身体を自分の中に収めるようにして抱き締めた。





(20111123)

デート編、続きます。
 

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