その他1

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忍足侑士



例えばこの道の先に真実が待ってるとして、誰が歩を進めるだろうか。
きっと誰も行かない。この場にある真実に手を伸ばすから。

人間ってホント醜い。一人じゃなにもできないくせして自分は強いんだとかすごいんだとか自尊心高く持ちすぎちゃって。

ああ、なんであんな奴らのことなんて信じたんだろう。今になって後悔しても遅いけど。

でも一番許せないのは、
あんな奴らでも私にとっては大切な仲間だということ。そして、あんな奴らでも大好きだってこと。

つまり、自分が一番許せないってこと。


「………はぁ、」


全部全部、自分のことなのに。
醜いのは私なのに。
人のせいにでもしないと、壊れてしまう気がして。
私が私でいられなくなる気がして。

この痛みを何処にやったらいいのかわからない。それは、涙となって幾度となく現れる。


「………っ、」


悲しくない。一人でも平気。
そう、自分に言い聞かせる。
図書室の隅でうずくまりながら、いつものように彼の言葉を思い出す。


『俺はなにがあっても、彼方だけを信じとる』


「侑っ、士……」

『呼んだか?』


………え?
あるはずもない返答に、私は思わず顔を上げる。
そこには侑士がいた。まるで、私の声を聞いて来てくれたかのように。


「…なんでっ、」

『言ったやろ?』


『『俺はなにがあっても、彼方だけを信じとる、って』』


あの日と同じ台詞。
私が孤独感に耐えきれなくなったとき、頭の中で反芻させた言葉。

そして今、私を抱き締めて耳元で囁いた愛。


「…遅いっ、よ…。私、ずっと、一人で…でも、ずっと…侑士、の、言葉思いっ、出して…信じてるって、そう言ったから、待ってて…」


自分でもなにを言っているのかわからなかった。
ただ侑士は私の頭をぽんぽんと撫でて、私を安心させる。ごめんな、って何度も言い続ける。

謝られたら、なにも言えない。侑士は、本当は、なにも悪くないのだから。


『…ごめんな、遅なって。これからはずっと、そばに居るから』


そばに居るから。その言葉も、あの日の言葉のように信じてる。
侑士が私だけを信じると言ってくれたように、私も侑士だけを信じてるから―――。





私を信じてください
(信じ)
(信じられることに)
(依存して、)

(20111128)
 

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