短編3

□期間限定の恋
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期間は一週間。

それまでに俺を落とすことができたら。

付き合ってやってもいいぜ?






ああ言われたのはもう六日も前のこと。
気がつけば朝。昨日どのようにして寝たのか、全く覚えていない。
待ち合わせ時間は十時。俺様な彼を待たせることは彼の機嫌を損ねるほかない。というわけで、三十分は早く行かなければならない。(彼もなんだかんだ言って来るのが早いのである)

髪型よし。服装よし。携帯も財布もちゃんと持った。


「いってきます」


誰もいない部屋に、私の声だけが響いた。






「……え、」


彼はいた。待ち合わせ場所に、目の前に。
私は驚きを隠せなかった。え?だって九時には家を出たし、今だってまだ二十分だ。最低でも十分は余裕がある、はずなのに。
彼は目の前にいる。立ち止まっている私を見て、此方に駆け寄ってくる。はにかみながら頭を撫でてくれる。
これは、夢?


『今回は俺様の方が早かったな』

「…なんで?」

「なんでってそりゃ、お前がいっつも来るのはやいからだろ?男は女を待たせちゃいけねぇんだよ』


ほら行くぞ。その言葉よりもはやく掴まれていた私の右手。
なんだか今日は、いつもとは少し違う態度にどきどきしっぱなしだ。




「ここ…」


ついた場所は遊園地。
いつだったか、私が遊園地に行きたいと言ったときに、跡部が貸し切ってやろうか?と言ってきたことがあった。わかってないなぁ跡部は。遊園地は混んでるからこそ遊園地なんだよ。そう言うと、わけがわからねぇなんて言いながら柄にもなく首を傾げていた。
なんだか、思い出すなぁー…。

私がぼーっとしているとふっ、と笑う声が聞こえた。


『ほら、行くぞ』

「…うん」


もしかして跡部、あの時のこと覚えててくれたのかな?
そんな期待が、胸の中にあった。




「……ギャァアァアァアァアァアッ!!!」


さっきの期待はどこへやら。多分私を恐怖に晒した強い風と一緒に滅びた。
絶叫系は苦手だと言ったのに、跡部があれはなんだとか言って好奇心に満ち溢れた目で私の腕を引っ張るから。


『…この世にこんなスリルに満ち溢れた乗り物があったとはな』

「ただのジェットコースターだよね」

『待って乗った甲斐があった。…これが、遊園地の楽しさなんだな』

「まぁ…でも個人的には観覧車とかのほうが……」

『よし、もう一回乗ろう』

「はぁっ?!!」


本日何度叫んだだろう。もうこんな奴と二度と遊園地になんか来たりしない。
でもそういえば今日で最後なんだった。そう考えると、寂しくなった。






『…そろそろ帰るか』

「…うん」


楽しかった日々も今日で終わり。
もう悔いはない。そう言いたいけど、やっぱり辛い。


「…跡部、」

『アーン?』

「…楽しかった。ありがとう。今日で終わってもっ、私は…跡部のことっ…」


お願い。涙なんて溢れてこないで。
重い女だなんて思われたくないの。
最後は笑って終わりたいの。

跡部が、大好きだから。


「あとっ、べ…」


ありがとう。
最後のお別れに抱き締めてくれて。
この温もり、一生忘れない。


『あのよ、』


跡部が私の頭を撫でながら、静かに発する。
本当はこれ以上なにも言わないでほしい。なにかを期待してしまいそうな自分がいる。諦めきれなくなる。もっと、ってそう思ってしまう。そんな自分が、嫌になる。跡部を好きになればなるほど、求めれば求めるほど、それは自己嫌悪へと繋がる。

でるものは溜め息だけ。
それが合図とでもいうように、跡部が口を開く。


『この一週間、楽しかったぜ。今まで付き合った女の中で、お前が一番最高だった』

「なにも…言わな、で…」

『お前を、離したくない…』

「…言わない、で…!」


これ以上私を、惨めにさせないで。
最後くらい、いい女で終わらせて。

次々と発せられる言葉は、それさえも許してくれないの?


「…もう、やめよ……、ばいばい…」

『待てっ!』

「これ以上、なに」

『お前が好きなんだ』


私の言葉を遮って、その上胸ぐら捕まれて強引なキス。
自分勝手にもほどがあるよ。
私はずっと、ずっと跡部だけが好きだったのに。





期間限定の恋
(延長戦)
(突入!)

(20111113)

お題提供:はちみつトースト

最後てきとーすぎ(笑)
 

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