5000打hit!

□梓にぃちゃん
1ページ/1ページ






「おにちゃーん、だっこー!」



「・・・少しは歩きなさい」



「いーやー!」



「ちゃんと歩いたらあの怖いお兄ちゃんがアイス買ってくれるって」



「・・・頑張る」



「えらいえらい」




お兄ちゃんは昔やっていた弓道っていうのを高校生になってまた始めた。



私は梓お兄ちゃんの弓を引く姿が大好きだったから凄くうれしい。



でも、梓お兄ちゃんは高校でりょうって言うところに住んでるらしいから全然会えなくて、寂しいんだ。



「怖いって誰のことだ!」



「宮地先輩に決まってるじゃないですか。ねぇ、月子先輩?」



「宮地君、妹!ちゃんが怖がっちゃうよ」



「むっ・・・」



お父さんとお母さんは良く分からないけど家に帰ってこない。



しばらくしたら帰ってくるって言ってたけど、お仕事らしい。



だからお兄ちゃんが夏休みのこの時期だけ特別に私をお兄ちゃんと一緒に居させてくれるんだって。



でも今は草がいっぱいある所を歩いてる。



・・・ここ何処なんだろ?




「お兄ちゃん、ここどこー?」



「合宿所に行くんだ、この道をもう少し進んだらもう着くよ」



「・・・どれくらい?」



「もうちょっと」



「じゃあ頑張る!」



そうやって言えば手をつないでる右手をぎゅっと握ってくれる。



お兄ちゃん、やっぱり好き!




「ちょっと・・・部長、まだつかないんですかぁー・・・」



「もう疲れましたぁ・・・」



「寮に行くまでにもう疲れたんすけど・・・」



「この辺なんだけどね」



「電話しましょうか?」



「あ、ここ圏外だよ」



・・・行き成り皆が止まった。


んー、つまんない。



あ、チョウチョさんだー!


待って待って!


網持ってくればよかったなぁ


捕まえてお兄ちゃんに見せてあげようっ!




「あれ・・・?ここどこー・・・?」



お兄ちゃん達が居る所から随分離れてしまったと気がついたのはチョウチョが空高く舞い上がってからだ。




「お兄ちゃん・・・?」



周りを見渡してみても木や草ばっかり。




「あずさ、おにいちゃっ・・・」




泣き虫だなぁ、ほら、泣かないの。笑って?



いつ、言われたんだっけ・・・?



遊園地で?それとも動物園?



分からないけど、お兄ちゃんが居ないと、笑えないよ。





.





「あれ?妹!ちゃんは?」



月子先輩の声で周りを見渡してみた。


確かに、妹!が居ない。



「この辺がけ崩れが多いって・・・、妹!ちゃんの足が滑ったら、」



「・・・部長、手分けして探しましょう」



「っ・・・すみません」



「木ノ瀬が謝ることじゃないだろ。それよりも早く妹!ちゃん見つけてやらねーと!」



「・・・はい」



妹!が無事じゃなかったらどうしようかと僅かに冷や汗をかく。



泣いていないだろうか。まだ泣けるだけの体力が残っていれば良いけど。


くそっ、ちゃんと見ておけば良かった。



「先輩たちはここに居て下さい。僕が探してきます」



「でも皆で探した方がー」



「帰ってくる場所が分からなくなると困りますから」



それじゃあ!と先輩達の返事も聞かずに駆け出した。




「妹!っ・・・!」



こんな真夏日に駆け回るのだ、汗と一緒にどんどん体力が奪われていく。


妹!は大丈夫だろうか。


僕より体力が無いんだからもっと疲れてるはずだ。



無事なら、それで良いんだけど。



「妹!!!どこに居るの、返事して!」



「ぉ・・・に、ちゃ」



「妹!!?」



微かに妹!の声が聞こえる。



「・・・妹!」



「お兄ちゃん!!」



草の間をぬってしゃがんでいる妹!の体を抱きしめる。



「勝手に居なくなるなって言ったでしょ・・・!」



「ふぇっ・・・ごめんなさ、い」



しゃくりをあげている妹!の体を抱き上げて背中をぽんぽんと軽く叩いてやる。



「でも、お兄ちゃんも悪かった。ごめん」



「おに、ちゃ、は悪く、ない、もん・・・」



「ん、ありがとう。取りあえず帰ろうか。先輩たちも心配してたし」



「・・・うん」



帰り先輩たちのところに行くまで妹!を抱き上げていたけど、なんだかこの重さに安心した。



・・・って、寝てるし。



疲れたのかな。


僕も疲れたけど。



でも、




厳しい時は厳しく。




(後で説教ね)

(・・・あ、梓くんと妹!ちゃん帰って来た!)

(無事で良かったね)

(お騒がせしました)

(うわー・・・寝顔可愛いな!)

(犬飼先輩、触らないでくれますか)
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ