頂きもの&捧げもの

□ プラス a
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休み時間に各運動部の主将、副主将が職員室に召集され明日はグラウンド整備の為、全運動部の練習が休みになったことを聞いた。


伝達が終わると、大勢の生徒を追い返すように解散!解散!と各顧問が叫んでいる。


花井たちとは二、三言葉を交わしただけで別れ、同じクラスのサッカー部やラグビー部の連中と一緒にぞろぞろと連なり自分の教室に向かった。





土曜も日曜も関係ない運動部にとって、日曜に休みになるなんてことはかなり珍しいことだ。


教室に戻る途中も、口々に明日どうする?と相談していたり、彼女と会う時間が出来たとうれしそうにしているヤツもいる。


みんなと歩調を合わせ、ゆっくりと階段をのぼり浮かれたハナシに相づちを打ちながらも。


実は俺だって明日の休みのことを考えていた。




せっかくの休みなんだし、水谷と遊びに行けたらいいな。


たまには俺から誘ってみようかな、昼ゴハンは一組で食べるって言ってたっけ…





ぞろぞろ数珠繋ぎのまま教室に戻った直後、ズボンの右ポケットに入れていた携帯が小さく震えて。


ちらりと視線を落とすと、ぴかぴかとブルーの点滅が目に入る。




あ、みずたに、だ…



着信の色をひとりだけ変えているのは誰にも言っていないひみつ。


歩きながらぱくりと携帯を開きメールマークを開く。





あはは。明日が練習休みになったの、もう聞いたんだ。


俺が誘おうと思ってたのに先を越されちゃったな。



両脇に並んだ机の間を通り抜け自分の席に着いてから、もう一度メールを上から読み直してみる。



…?なんだろ、すごい違和感。


これ、ほんとにみずたにからのメール?




なんだか疑念が沸き上がるほどに水谷らしくない文面。


いつもはキラキラと動く絵が眩しくて、泣いたり笑ったりした顔がいくつも忙しく並んでいて。


そんでね、とか、だからねとか接続詞が多くて結局何を伝えたいのかわかりにくいメール、なのに。


なのになのに。




画面にあるのはあっさりした短い用件のみの文章。


明日、誘われてるのは間違いないんだけど…


なんとなく腑に落ちないまま、返信画面に切り替えた。


ちらりと教室の黒板上にある丸時計を見上げると、あと2分で授業開始のチャイムが鳴る。





わ、もう時間ないよ。


そりゃそうだよな。さっきまで一階の職員室にいたんだから。


そこでふと気が付いた。




ああ…


そっか。


用件のみのメールの理由。



誰よりも


誰よりも早く誘うため、だ。




職員室から戻った花井に明日練習が休みになったことを聞いて。


大慌てでメール送ってきたんだ。


俺は昼休みに誘おうって思ってたけど。


水谷はそれまで待ってられないくらい。




もしかして、俺が他に用事入れるとでも思ってんの?


めったにない休みなんだから、俺だってお前と一緒にいたいよ?


誰に誘われたって断るに決まってんのに。





水谷らしくない文面がやけに水谷らしく思えてきて、可笑しい。


あたふたと慌てて携帯を取り出してメールを打ってる姿が目に浮かぶ。



そんな小さなことに気付いてしまっただけで。


なんだか、ものすごく想われてるんだなーなんてわかってしまって。


ああ、こんなトコもすきだと再確認させられる。




だからって


そう簡単には口に出来ないけど。




取り敢えず、俺も明日は空いてることを伝えなきゃ。


もう休み時間が終わってしまう。


いつもの短い文章に


とりあえず俺らしくない顔文字でも入れてみようかな。




*end*
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