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□アンブラッセ2
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それから三年。


俺は会社を退職し、デザイン会社に入社、会社経費でデザインの学校に通いながら勉強をしている。


先輩たちにも恵まれ、今はデザインに必要な様々な資格取得に挑戦中。


新しい発見の毎日で楽しく過ごしている。
 


栄口のパン屋『パン・ド・ブルーム』はどんどん有名になっていき、雑誌やテレビにも取り上げられ以前にも増して忙しくなっていた。



ひとりでは経営出来なくなりバイトを雇いながら、一切妥協せずおいしいパンの追求をしている。




からんからん。
 

聞き慣れたドアベルの音と同時に店に入り、閉店時間のため明かりを落とした店内を通り抜け厨房を目指す。


オレンジ色のやわらかい明かりが厨房を照らし大型の銀色のオーブンの前で立っている愛しい後ろ姿を見つけ、足早に近づくと後ろから優しく抱きしめた。


細い首元に唇を寄せるとあまくてあたたかいパンの匂いが漂う。


『おつかれさまー』  


変わらない少し高めの優しい声に顔が緩む。


顔だけ横を向いてふわりと笑うと、よしよしと頭を撫でてくれる。  


『さかえぐちも、おつかれさまー』


同じように栄口の頭をよしよしと撫でるとふふっと小さく笑い目を細めた。


うれしくてあたたかくて、栄口の顔を見ていると、なあに?と問うような瞳を向けてくる。


愛しさが溢れ、そっと唇を寄せるとゆっくりと瞳が閉じられ唇が合わさった。
  




最近はお互いに忙しく毎日は会えなくなったが、こうして会える時は触れ合い身体を重ねる関係になった。  


お互い男と付き合うのは初めてで。


キス以上のことに戸惑いもあったがネットの動画や情報を読み漁り、絶対に栄口を傷つけたくない、嫌がることはしたくないと誠心誠意伝えると栄口は笑いながら大丈夫だよと言ってくれた。


時間をかけて。  


焦らず、少しずつ、ふたりのペースで。


一緒にいることが幸せで。


ふたりで笑えることがうれしくて。


幸せがいっぱいになって、溢れでて


ふたりははじめて繋がった。





ほんとは毎日一緒にいてずっと繋がっていたいくらいなんだけど。 


お互い仕事も大切で。  


それぞれの生き方とかひとのつながりとかも尊重しながら共に時間を共有できたらと思う。


だから今のペースでたまに一緒に食事をしたり、抱き締めたり、あまい時間を過ごす日々が心地よい。



あたたかくてやわらかな唇を何度も角度を変えてキスしながら、少しずつ舌を差し込むと応えるように小さな舌が当たり、やさしく絡め取り味わうように舌を合わせた。



『んッ‥』


後ろからやさしく抱きしめていたはずなのに、少しずつ栄口の身体のラインを確かめるように強く指を這わせてしまう。


白のコックコートの上からでもわかる両方の胸の飾りのあたりを弄るとぷっくりと存在を主張しだした。



『んぅっ、ち、ちょっとっ‥』


栄口はくすぐったくなってきたのか、合わさった唇をずらして真っ赤な顔でみじろぎしだした。



『ん?もうちょっとだけ、ね?』


ちゅっと音をたてて栄口にキスをして、あまえるように見つめると、恥ずかしそうに俯いた。


後ろから抱きしめたままコックコートのボタンを上から外していくと栄口の綺麗なうなじは赤く染まっていた。


愛おしくて首元にもキスをし、軽く吸い上げながら栄口の身体に指を這わせていく。


コックコートを羽織ったままの栄口は禁欲的で妙に興奮してしまう。


薄いシャツの上からゆっくりと両方の手で胸の突起を人差し指の指先でそっと撫でるように触れるとどんどん固く尖ってくるのがわかる。


我慢出来なくてシャツの裾から手を入れて、直接指先で優しく撫でると存在を主張するように固くなり、指で弾くように何度も弄ると身体を震わせて腰を捩った。



『や、あンッ‥も、や‥だって‥』


あまく濡れる栄口の声。


『うん、ごめんね、もうちょっとだけ‥栄口、かわい‥』


首の後ろに何度もキスを落としながら熱く昂る自身を栄口の臀部に押し付けるようにすると、栄口はびくりと身体を震わせた。


『んッ!み、ずたに‥』


『いや?』 


何度身体を繋げても、もっと欲しいと思ってしまう。


やさしくしたいのにもっと触れていたくて、おれの手で乱れる栄口をみたいと思ってしまう。



『‥ここじゃ‥やだよ‥』


栄口の拗ねたような声はやっぱりかわいくて、ふはっと笑ってしまう。


『うえ、行こっか?』






栄口の身体はあたたかくてあまい。


もう唇で触れたことがない場所がないくらいだ。


いつだってぜんぶに触れたくてたまらなくなる。   



『ふっ‥あ、ぁぁっ‥』


とろけそうな声も逃したくなくて深く唇を合わせると熱い内部がぎゅうっと締め付けてくる。



愛おしくて目蓋に何度もキスを落とすと栄口は潤んだ瞳でやわらかく微笑んだ。


少しでも長くあまい時間を共有したくてゆるくに腰を動かすと栄口は手を伸ばしておれの髪を指で梳かすように撫で、頬に唇を寄せてきた。


『はッ‥ぁァッンッ、ふ‥みっ‥んっ‥』


あまい吐息が耳に掛かり簡単に再熱してしまう。

『ッ、ゆっ、うとッ‥‥っ』



『アッ‥ゃぁっ、んンッっ‥』



縋るように背に回された腕が熱く、お互い熱に浮かされたみたいに求め合った。







ベッドで微睡む時間がゆっくりと過ぎる。


目を閉じて小さく寝息をたてる栄口の身体を引き寄せ腕に抱き込むと幸せな重みとあたたかさに一気に眠気が襲ってきた。


明日の朝は遅めの朝ごはんを一緒に食べる約束だ。


とろとろスクランブルエッグはバター多めで。


ミルクとシュガーを入れたカフェオレは大きめのマグカップでたっぷりと。


ふんわりと焼いたパンの種類は栄口の気分でね。


いつだって美味しくてしあわせな時間。


ふたりの明日が楽しみで。  


横で眠る愛しい君の頬にキスをして眠りについた。




2022.3.16





*・゜゚・*:.。..。.:*・ちょっぴりあとがき*:.。. .。.:*・゜゚・*

なんか長いおはなしになってきたので一部と二部にわけてみました。
一部はお付き合いまで、二部はあまいおはなしになればいいなぁ( ´ ▽ ` )
 
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