main

□4
1ページ/2ページ

SAKAEGUCHI side


水谷は誰にでもやさしい。


自分だけ特別


なんて絶対に思っちゃダメだ。



そう何度も自分に言い聞かせた。


廊下で水谷とすれ違うたび女の子が水谷の腕に手を絡ませていたり、

胸を押し付けてたり。


水谷は一応断ってるらしいが、きつくは言わないので

結局は女の子の意志が通ってしまう。



…また、違う子と一緒にいる。


俺はモヤモヤした気持ちを隠し明るく手を振ってすれ違った。



水谷の持つ空気は優しくて居心地がいい。


練習終わり一緒に帰りながらアイスを食べたり、お菓子の話や動物の話をしたり。


どんな話題でも変わらず傍で微笑んでくれる水谷。


一組までわざわざ古典のノートを借りに来たり、練習後も一緒に過ごす時間も多くなって

お互いの家族の話や将来なども打ち明けるようになった。


水谷はどんな自分でも受け入れてくれる…


そう思うだけで心が軽くなり、

ますます傍にいたいと思うようになった。



でも、

自分のいない場所での水谷は、いつも女の子がまわりにいて

困ったようなうれしいような顔をしている。



俺は教室で頬杖をつき一人、気持ちを整理していた。


『なんだよ。水谷のヤツ。デレデレしちゃって…』


小さな声でつぶやく。



…でもそれは誰にも聞かれてはいけない…



…絶対に誰にも気付かれてはいけない…



自分の中の秘密の真実



自分に言い聞かせ心を落ち着かせる。



一番近い友達でいたい。



それならば許されるだろうか…



変な期待を持ってしまわないように、

早く彼女を作ってしまえばいいのに…



このままで充分幸せなんだ


大きく深呼吸し、心に蓋をする。


放課後の練習では、また何事もなかったように


リセットしてトモダチになるために…
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ