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□T 空と海の境界線
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MIZUTANI side
『んで、今日の朝練何で遅刻したんだよ』
移動教室に向かう、階段を上っているときに阿部に声をかけられた。
『えっ!う〜んえっと…』
『栄口と一緒にな』
花井もニヤニヤしながら話に入ってくる。
『栄口、真っ赤になって誰とも目合わせなかったんだぜ。何してたんだか』
『えへへへ〜』
朝はガマン出来なくて栄口を公園に連れていって…
『うわっ。水谷、にやけてるし』
俺の一段上の階段を踏んでいた花井が覗き込んできたので、びっくりして立ち止まった。
『さては、人には言えないようなことしてたな』
ちろりと睨んで阿部が指を差してくる。
『…ん〜と…まぁ…えへ』
『うわ…まじかよ。聞くまでもないな。なんだ、このだらしない顔』
花井がうんざりしたようにひらひらと手を振ってまた歩き出す。
『はぁ〜。だぁって栄口めちゃめちゃかわいいんだもん』
あの気持ちいいんだけど恥ずかしくって我慢している顔が、たまらなくかわいい。
時折漏れる甘い喘ぎ声とか。
…あぁ栄口に会いたくなっちゃったなぁ。
でもまだ怒ってるかも…
もぉって上目遣いに言われてもかわいいだけなんだけどね。
長い階段を上りながらでも、栄口のことを考えているだけで幸せになる。
のんびり上がっていたからまわりなんてまったく目に入っていなかった。
いきなり斜め前から誰かがぶつかってきて後ろへと身体が傾く。
『うわっ!』
花井と阿部の驚いた顔が目に入った。
空を掴むように手を伸ばしたが、何の支えにもならない。