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□V
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MIZUTANI side



『水谷、疲れてるな』



練習後、着替えていると花井が話し掛けてきた。



俺ため息ついてたのかな。



『うーん。結構キツイかも。時間が足りない。それにやっぱ女の子相手で気を使うし…』



『なになに?水谷の彼女?俺見たよ。自転車でニケツしてたもん』



田島が花井にしがみつきながら話しに入ってくる。


『かっ彼女じゃないよ!俺が練習に参加出来ない理由知ってるだろ!』



『ニシシ〜。知ってるよ。でもずっと一緒にいたら状況も変わるんじゃねぇの?

だってお前がみさちゃんって呼んでるの、俺知ってるも〜ん』



『なっ、何言ってんだよ』



あわてて視線をさまよわせ栄口を探す。


栄口は泉と巣山と話しをしていて聞こえていないようだった。



『花井だろ!田島に言ったの!』


『そうだけど…うそじゃないだろうが』



花井が冷めた目で俺を見る。



『かわいい子だったな。もうキスくらいしたのか?』



田島が身体を乗り出して興味深々に聞いてくる。



『すっ、するわけないだろ!冗談でもそんなコト言うなよな!』



『ふーん。ほんとかなぁ。でも、俺だったらダメだね。

もし花井が水谷みたいに女の子と毎日ニケツで一緒に登下校してて、

しかも名前呼びなんかしてたらさ、マジギレしてめちゃめちゃなぐって別れるな』



田島は一人ごとのようにあごに手を当ててぶつぶつ言っている。


花井は田島の頭に手を置くとふんわり撫でている。



『俺はそんなバカじゃねえよ。何が大事かくらい知ってる。

水谷、そういうことだ。逆の立場を考えたことがあるか?

お前もっと人の気持ち考えた方がいいぞ』



『あ、それ前に俺、水谷に言ったことある〜』




ちょっと待て!


栄口が女の子と毎日ニケツで一緒に登下校してて、しかも名前呼びしてるってことか!?



ダメダメダメだ!



そんなの絶対許さないよ!


どんな理由だろうが絶対にダメだ!


もしも好きになっちゃったりしたらどうするんだ!



って、栄口は俺に思ってるの?



不安にさせてた?



そう言えばこの二週間ほど、一緒にいる時間はほとんどなくて二人でいたことなんてあったっけ。



最近は電話もメールもしていないかも。



部室の中にはもう栄口の姿はない。




『俺、バカすぎて愛想つかされそう…』




ドアを見つめたままぽつりと呟いた。
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