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□群青らいおん 1
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真っ青で抜けるような空。


濃い青の中に白い点。


恐がらず真下に身体を入れてグローブを構える。


徐々に大きくなる白に一瞬縫い目が見えてそれがボールであることが確認出来た瞬間、パシッという小気味の良い音と共に、グローブに吸い込まれた。



『このパシッって音、いいよね〜』



ボールを取り出して、左腕を前に突出し後ろに引いた右腕を大きく伸ばして。


ぐんっと筋肉が引っ張られるのを感じるくらい振りかぶって遠くに立っている泉に向かって投げる。



『はぁ〜?なんだってぇ〜?』



泉は迷いもせずボールの真下に移動して、グローブを構えて。



パシッって音が青い空に響く。



ただ今、遠投とフライを取る練習中。




『だーかーらー、ボールがさぁ、グローブに入る音っていいよね〜』



きれいな弧を描いて白球が行ったり来たり。



『ばーか。なに悠長なコト言ってんだよ。新入部員が来たらお前なんかスタメン落ちだ、ぞっ!』



ひゅーんと青に吸い込まれ弧を描いてパシッ。



『うっわ、人が心配してることをズケズケ、とっ!』



ひゅーん、パシッ。



『事実だろー、がっ!』



ひゅゅーん……



あ、これはおおきい、かな。



『水谷、もっとバックバック〜!』



『おー!』



頭の上で取ろうとするからバンザイしちゃうんだって。


頭の上だとボールの軌道が思っていたよりも高すぎたり、急な風で流されちゃったら届かなくなるからね。



だから身体の前で取るくらいのイメージが調度いいらしい。



前、前って思いながら落下地点を予想してボールを見つめたまま後ろに進む。



『オーライ、オーライ』



『あっ!みずたにっ!あぶなッ!』



『へ?う、うおっ!?』




ガサガサッ!



ボールにばっかり気を取られていて足元なんて見ていなかった。



膝下くらいの植込みの帯の中に突っ込んでしまったみたい。



『いってぇ〜』



小さい葉っぱの植木に腰掛けるみたいな格好になっていて、よいしょと木の上に手を突いてなんとか這い出した。



『おーい。大丈夫かぁ?』



足音と共に泉の声がだんだん近くなる。



『ふぇーい。だいじょーぶー』



グローブを見るとちゃんとボールが納まっていて。



『へへっ。やったじゃん。オレ』



ひとりで笑っていたら、ぶーんっていう、なんだか耳障りな音。



それも複数のぶーん。



ぶーんなんてもんじゃなくなって、ぶぶぶぶと俺のまわりに飛び回ってる。



『うわわわっ!?ムシィ〜!!』



小さなムシだっていっぱいいるとキモチワルイッ!



思わずぎゅっと目を強く瞑って、しゃがみ込んだ。


そうしている間も、ぶぶぶぶぶと大量のムシが威嚇している。



『うわーー!助けてぇー!』



『ったく!なさけねーなぁ』



真上で泉の声がしたと思ったら、頭が急に涼しくなってキャップを取られ、シュッ、シュッと風を切る音。



あ、俺のキャップで追い払ってくれてるんだ。
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