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□U
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いろんな店を覗きながらいっぱい歩いて、いっぱい笑って。


水谷といるだけで楽しくて、どんなコトもキラキラしててわくわくする出来事に変化していく。


あったかいミルクティみたいな色の瞳はずっと隣にあって、ゆっくりしたゆるい言葉とやさしい口元にほっと安心する。



もっと一緒にいたいなーって思って高い空を見上げたら、誰にもわからないようにそっと手を握られて。


びっくりして心臓がばくばくと胸に響いて、思わず手を離してしまいそうになったけど。


一度繋いだ手のぬくもりは指先からあまい痺れのように想いと共に伝わってくる。


溶けてしまいそうなくらいやさしい微笑みに、やっぱりみずたにのコトがたまらないくらいすきだと再確認してしまう。






水谷が行きつけの靴屋でNIKEの靴の買って、店を出る頃にはもう昼すぎになっていた。


取り敢えずハラは減ってるし、何か食べよっかってなって通りの延長線にある定番のファーストフードの店に足を向けた。



『うわ、結構込んでるね』


『日曜だもんねぇ』


明るい店内はにぎやかな音楽が流れていて、同じような高校生くらいの人たちが友達としゃべりながらハンバーガーをパクついている。


レジがある場所に添って長い列の後ろに水谷と並んで待っていたら、満面スマイルのおねぇさんに『どうぞ』と薄っぺらいメニューを手渡された。


おねぇさんは次々入ってくる客に同じようなスマイルを浮かべながらメニューを渡している。


そうしながらもテーブルに置きっぱなしの包み紙を片付けたり椅子を並べたりと込み合った店内を縫うように動き回り忙しそうだ。




あーいう人は何でも出来るタイプなんだろうな。


ストレスとかナイのかな?


にこやか営業スマイルを振りまいているけど実際仕事する側にしたら、こんなに並んでまで食べたいのか?とか思ってんのかなぁ?




テキパキと無駄のない動きの小さな背中をぼんやりと見ていたら、あっという間に順番が来て今週の一押しバリューセットを頼んだ。


水谷はハッピーセットのおもちゃが気になるらしく、横のショーウインドウに飾られた妙な動きをするパンダをじっと眺めていたけど、やっぱりやめて同じバリューセットにしたみたい。


ものの数分で注文したものがトレイに乗せられて来て受け取ったものの、店内は混雑してて空いている席はありそうもない。





『先に席をとっておけばヨカッタねぇ』


『ここ2階もあるハズだから上に行ってみよっか?』


螺旋状の狭い階段を上ると1階よりは人が少ないようだけど、やっぱり空いている席は見当たらない。


こういうトコで食べてるってことは、食事に時間を取りたくない人たちだろうから食べ終わったらすぐに席を立つんじゃないかな。


いや、女子は食べ終わってものんびりおしゃべりするもんなのか?



取りあえず、今のところ空きそうもないのでトレイを持ったまま邪魔にならない壁際へ移動した。


『すぐ空くかな?』


『…………』


あれ?みずたに?


なぜか黙り込んだままの水谷を不信に思い、顔を覗き込むと困ったような表情。


『みずたに?どした?』


そんなにおなかが空いていたの?


伏せた目尻がやわらかそうな前髪の隙間から少しだけ見え隠れしていて、長い睫が小さく揺れている。




みずたにって黙ってると印象が全然違うんだよな・・・


なんとなく見とれてしまっていると、ふわりと髪が揺れあまく茶色い瞳がぱちりとまっすぐ見つめてくる。


ふわふわしてるくせに、時折見せる強い意志を持った眼差し。



『…ねぇさかえぐち、さっきのおねぇさんみたいなのタイプ?』


『はぁ?さっきって?』


『ほら、メニュー渡してくれたおねぇさん』


『ん?いた、かな?』


『順番待ってる間ずっと見てた…』


『あぁ、よく働くなぁって…』


『ほんとにそれだけ?』


『それだけ、だけど?』


『ふぅん…』





ふいと横を向かれたかと思うと、ぷくんと頬が膨れてこどもみたいな仕草に吹き出しそうになる。


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