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□V
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『…栄口くんって、あんまりしゃべらないんだね』
控えめな吐息のような言葉が耳に入って息を呑んだ。
横に座っていながらも、最初にひとこと言葉を交わしただけ。
名前も知らない彼女の存在を完全に忘れてた。
『あ、ご…ごめん』
真横に座った赤いパッチン留めが可愛らしい彼女の方を見るとぱちりと目が合った。
『私ね、何度か応援に行ったんだよ』
『そ、そうなんだぁ。ありがとう』
小さくはにかみながら話す彼女は贔屓目に見ても可愛いと思う。
視線を落とすと白くて華奢な指先。
小さな爪はやさしい桜色でまあるくきれいに切りそろえられている。
ああ、こーいうのも女の子って感じだよなぁ。
出かけるときはおしゃれして。
ちいさいものとか、かわいいものがだいすきで。
あまいバニラみたいな匂いはきっと彼女。
視線を窓の外に向けると、店の向かいにあるジーンズ店の赤い看板が見えた。
普段、広いグラウンドにいることが多いせいか
空が見えないと落ち着かない
薄いブルーだったり、眩しいくらいの抜けるような青だったり
やわらかそうな雲がゆっくりと流れていくとことか
まっしろな塊のような雲が貼り付いているみたいな空とか
ブルーとホワイトのコントラストは毎日、視線の先にあって
あたたかい光と風が木々を揺らす
あー、練習したい
俺の居場所ってココじゃないよなぁ・・・
店の中は相変わらず、ざわざわ。
ひしめき合うような狭い空間にテーブルが並べられて、大勢の人が一斉に食事を取るという場所に強い違和感を覚えてしまう。
一口だけ齧ったままのハンバーガーに齧り付き、一気に食べ終わるとくしゃりと包み紙を握り潰した。
『私ね、あんまりルールとか知らないから、よくわかんなかったけどがんばってる姿、かっこよかった…』
『はは。気を使わないでいいよー』
『気を使ってなんかないよ。ほんとに、カッコいいな〜って…』
彼女は、ぱっと俯くとみるみる頬が赤くなっていく。
気分が悪くなったのかと思って顔を覗き込むと更に下を向いてしまう。
さらりと細い髪が頬を隠し、ほっそりした首と肩が露わになった。
俯いたまま黙ってしまった彼女に戸惑っていると、水谷の隣に座っていた彼女が見かねたように話かけてきた。
『そーなんだよねぇ。この子、ずっと言ってたんだよぉ。バントじゃなくて、ちゃんと打ったらもっとカッコいいのに〜って』
『ち、ちょっとー!言わないでよ!だ…だってね、栄口くんバントばっかりだからアウトになっちゃうでしょ?塁に出て欲しいんだもん!』
俯いていた彼女は、がばっと頭を上げると慌てたように早口で捲し立てるように一気に言い切った。
対照的に、落ち着いた様子のもう一人の彼女は頬杖を付いてにやにやしている。
『バントしないでってずっと言いたかったんじゃないのぉ?"あんた"の栄口くんにさぁ?』
『き、きゃーッ!なななななに言い出すのよ!』
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