頂き物小説

□トロ様より
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「・・・なんだこれ」


ギルドに来てみれば、蛍光色の飾りがいくつも飾られ、ギルドメンバーが随分奇抜な衣装に身を包んでいる。

遠い目をしながら、今日は帰ろうと思いギルドを出ようとしたとき。


「あ、おせーぞガジル!」


狼男の仮想をしたナツが駆け寄ってくると、問答無用で腕を掴まれ引きずられる。


「おい!離せサラマンダー!!」


「何言ってんだ、お前まだ服着替えてねえじゃねえか。あ、衣装はもう決まってるからな!」


「知るか!これはなんなんだよ!!」


「何って、ハロウィン。知らねえの?」


「何の真似かって聞いてるんだよ!!」


引きずられながら聞くと、いつもの子供っぽい笑顔でハロウィンパーティーだ!と返された。
どうやらこのギルドでは、ハロウィンで仮想をしてお互いにお菓子などを配ったりしているらしい。


「じゃあこれに着替えて来いよ。お菓子の入った籠貰ってくるから」


「・・・なんだ、これ」


「俺と同じ狼男」


殺気が沸いた。

なんだ、俺に犬耳をつけろってか?
サラマンダーならギリギリいけるかもしれないが、俺が付けたらもうアウトだろ。
ご丁寧に尻尾まである。

あ、でもさわり心地はいいな。

ぐるぐると考えていたが、逃げられない雰囲気と今の楽しい雰囲気を壊すのは忍びないので、果てしなく嫌ではあるが着ることにした。

今日休めばよかったな。






















「これがお菓子な。トリックオアトリーメンとか言われたら一つ渡せばいいから」


「トリーメンってなんだ。トリートだろ」


「そうそうそれ!!」


うんざりしながらも、ナツから籠を受け取る。
自分の耳には、今犬のふさふさした耳。
用意されていたズボンからは同じくふさふさした尻尾。
全体的に古い作りの服は、以外にもガジルに似合っていた。

これ、いつ頃帰れるんだ。

そんなことをぼんやり考えていると、慣れた人物が近付いて来た。


「犬耳似会う・・・・・」


「第一声がそれかチビ」


目の前にはふわりとした濃い紫のスカートを履き、白い布を上から来たレビィが関心したような瞳で見上げていた。


「お前、それなんだ」


「これ?魔女はありきたりだから、お化け!」


「ああ、子供の」


「違う!!子供じゃない!!」


なんでも、ルーシィが魔女をするので自分はその魔女の友達のお化け、という設定で選んだらしい。
設定まであるのか。


「あ、ちなみにガジルとナツとウェンディは、狼の兄妹っていう設定だからね」


「おいマジか」


だからあいつとお揃いだったのか。

簡便してほしい。


「でも似合ってるよ?あんまり違和感ないし」


「嬉しくねえよ」


ゴツイ男が犬耳に尻尾って、誰が得するんだ。
ため息をつくと、あ、と思い出したようにレビィはつぶやいた。


「Trick or Treat!!」


「あ?」


突然高い声で言われ、気の抜けた声が出る。

そうだ、菓子を配れと言われてサラマンダーに渡されたんだった。


「ほらよ」


籠からカップケーキを掴み、放り投げる。
それをキャッチしたレビィは、投げないでよとむくれたがすぐに笑顔に戻った。


「お前ら、毎年してんのか。これ」


「うん。楽しいでしょ?」


そう聞かれ、辺りを見回す。

いつも通りうるさいギルド。
いい年したおっさんまで楽しそうに仮想している。
いろんなところで笑い声が聞こえ、常に誰かが誰かの傍にいた。

ああ、本当にこのギルドは


「楽しそうだな」


ぽつりと声に出たそれ。
レビィはみんなを見つめるガジルにの服を引っ張った。


「ガジルは楽しくないの?」


「・・・」


もう一度ギルド内を見まわし、ふうと息をつく。


「・・・暇だと思う隙がねえな、ここは」


それは、遠まわしに楽しいと言っているということ。
いつもの鋭い目つきではなく、優しい瞳で仲間を見つめるガジルに、レビィも自然と笑顔になる。

素直じゃないけど、慣れ合いは好きじゃないと言いながらも、彼は本当にこのギルドが大好きなんだなと思う。

きっと、それを言うとまた眉間に皺を寄せるのだろうけど。


「・・レビィ」


「へ、何?」


突然名前を呼ばれ、気の抜けた声を出してしまった。


「Trick or Treat」


「ふぇ?」


「ふぇじゃねえよ。ハロウィンだろ」


まさかガジルから言ってくれるとは思わなかったレビィは、慌てながら持っていた飴を差し出す。
ピンクのかわいらしい包みは、レビィに似合っていた。


「は、はい!」


「飴とは、やっぱ子供っぽいな」


「ちょ、何をそれ!」


悪態をつきながら、レビィから飴を受け取る。

自分がまさか、こんな行事に参加するなど夢にも思っていなかった。


「まあいいか」


「何が?」


「別に」


不思議そうなレビィに、ガジルは顔を近づけ小さく耳打ちした。


「         」  



小さくレビィにだけ聞こえるように言うと、そのまま歩いていってしまう。

残されたレビィは、顔を真っ赤にさせたままふるふると震えていた。








(以外と可愛いと思っただけだ、その格好)













(ガジル君、結構やるよね)

(何を)

(レビィさん。真っ赤だよ?)

(可愛いからいいじゃねえか)

(意地悪だなあ・・・あ、トリックオアトリート!)

(はいはい)お菓子渡す

(ありがとう!)

(そういやお前って・・・)

(ジュビアは雨女です!紺色の綺麗な着物があったから丁度いいと思って)

(似合いすぎだろ)




***************

ドラゴンスレイヤーズ、シーツに包まれたレビィちゃん、レビィちゃんを子供扱いするテクニシャンなガジルさん、ガジル×ジュビア……。
あらゆる意味でツボです(*´д`*)

トロ様ありがとうございました〜vvv

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