小説

□彼女の逆襲
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「よしっ、今日は誰もいないわね…。さ、レビィちゃん上がって!今、お茶でも入れるから。」

「うん、ありがとう!お邪魔するね。」


最近、レビィは元気がなかった。
原因はハッキリしている。彼女の恋人…ガジルが、仕事に行った先から戻らないのだ。

彼は、二週間程で戻るから、合鍵で部屋に入って待っていろと彼女に言い残し、ここから丸一日ほどかかる仕事先へと出かけて行った。
それから、もう一ヶ月が経とうとしている。

ガジルは、荒っぽい外見に反し、その場の状況を的確に判断して臨機応変に対応する事に長けていた。
その点において、彼の仕事ぶりに対するマスターの信頼は厚く、他には頼めないような「訳あり」の仕事を任される事も多い。
今回の仕事も、そういった類のものらしかった。

マスターのもとには、現況を知らせる連絡を律儀によこしているようだ。
どうやら無事ではいるらしいが、当初の予定よりも手こずっているのだろう。

レビィは、表面上は明るく振舞っていた。
だが、親友であるルーシィは、彼女が日に日に元気を無くしていくのを敏感に感じとっていた。
少しでも気分転換になればと思い、家でお茶でもしないかとレビィを誘ったのだった。



紅茶と、甘いお菓子の香りが漂う室内。
年頃の女の子2人は、他愛もない話をしては声を上げて笑い合い、楽しいひと時を過ごしていた。
ひとしきり笑ったあと、ルーシィが不意に神妙な顔で口を開いた。

「レビィちゃん、その…ガジルに会えなくて淋しいだろうけど、元気だしてね。アイツ何だかんだいっても仕事はキッチリこなすしさ…殺しても死ななそうだもん!……あっ、ごめん…///」

そう言って、ルーシィはしまったというように肩をすくめた。
しかし、彼女の飾らない人柄のせいか、ちっとも嫌な感じはしなかった。

「ううん!確かにそうだよね…無事でいる事は分かってるんだし…ありがとルーちゃん!」

こういう時、自分を心配してくれる親友の存在は本当にありがたい。
レビィは温かい気持ちになり、ガジルに会えない寂しさを、少なくともその間は忘れる事ができた。



ルーシィの家を出た時、ちょうど日が沈みかけ、辺りが暗くなり始める時間だった。
レビィはその足で、いつものようにガジルの部屋へと向かった。

鍵を開けると、当然誰もいない。
殺風景でガランとした室内。心なしか、空気も冷たかった。
レビィはヒンヤリとした食卓の椅子に腰掛けると、深い溜め息をひとつ吐いた。

(今日も、帰らないのかな…。早く会いたいよ…ガジル……)
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