リクエスト作品

□病める時も健やかなる時も
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楽しい時は、あっという間に過ぎていった。
明日の朝の便でフィオーレに帰ることになっていたので、2人は旅館での最後の夜を過ごしていた。
昨日までと同じように、入浴のあと縁側に並んで座り、涼みながら色々な話をした。
今回の旅で、レビィはガジルとの距離がとても近くなったと感じていた。

会話の途中、ふとガジルが黙り込み、しばしの沈黙が続いた。
初夏と言えども、まだ冷たい夜の風が、爽やかな緑の匂いを運んでくる。
レビィは何も言わず、彼が次の言葉を紡ぎ出すのを静かに待った。

何故かは分からなかったが、ガジルは結婚式の時の神父の宣誓を思い出していた。

『病める時も健やかなる時も、共に歩み、他の者に依らず、死が二人を別つまで―――。』

今更ながら実感する、この言葉の重み。
俺のような人間が、本当にこいつを…幸せにしてやれるのだろうか。
そもそも自分には、その資格があるのか。

気が付くと彼は、レビィの懐に額を押し当て、頭をもたれかけていた。

「………えっ!?」

一瞬かなり驚いた様子のレビィだったが、やがて彼女はその小さな手でガジルを包み込んだ。

「ガジル…これからは、私にもこうやって甘えていいよ。……たまにはね。」

「うっせぇ…一丁前な事言ってんじゃねえよ」

強気な言葉とは裏腹に、その口調は少し弱弱しく、彼の大きな身体がいつになく小さく見えた。
普段あまり隙を見せないガジルが、レビィだけに初めて見せてくれた、己の中の弱さ。
彼を懐に抱きながら、レビィは心の底から愛おしい気持ちが湧き上がってくるのを感じていた。


翌朝、ガジルの腕の中で目を覚ましたレビィは、彼を起こさないようそっと抜け出し、洗面所へと向かった。
レビィが戻ってくると、丁度ガジルは目を覚ましたところだった。

「ガジル、おはよう!!」

ニッコリと微笑むレビィに、彼はいつものように「ああ」と返事をした後、少し小さな声で言った。


「……オハヨウ」


いつも「ああ」とか「おう」という返事しか聞いた事がなかったレビィは、一瞬我が耳を疑った。

「まぁ……いつまでもガキみてぇに突っ張ってらんねぇしよ。」

照れくさそうに頭を掻くガジル。レビィは嬉しさのあまり彼に飛びついた。

「ガジルおはよ―――――っvvvvv」

「うおっ!?危ねぇ;;」
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