リクエスト作品

□この小さな温もりを
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恋をすると女の子は綺麗になるというが、自分はどうなのだろうか。

先日ギルドの皆の前で「他の女と比べるな」と宣言されて以来、レビィは天にも昇る心持ちだった。
気が付くと、寝てもさめてもガジルの事を考えてしまっている。
今まで異性に全く興味が無い訳ではなかったが、どちらかというと「恋に恋する」といった類のもので、ここまで一人の男性に心奪われたのは生まれて初めての事だった。

しかしあれ以来、ガジルの方からこれといって直接アプローチがある訳でもなく、他愛もない話をしては時々からかわれたり…という今まで通りの日々が淡々と過ぎてゆく。
もう少し、二人の関係をハッキリとさせるような「何か」が欲しい。
かといって、直接彼に問いただす勇気はまだない。

『ガジルにとって、私って何なんだろう………。』

少しでも気を惹こうと、より一層身だしなみに気を遣う位がせいぜいで、正直彼女は彼との距離を測りかねていた。



『ガジル、もう来てるかな……?』

そんな事を思い、今日もギルドへ向かう足取りは自然と早くなる。
我知らず、小さな胸がドキドキと高鳴っていた。
レビィは一つ深呼吸をすると、入り口の扉を開け、彼の姿を探して視線を走らせた。
程なく一番隅のテーブルに、長い黒髪の後姿を見つけ、最初に話しかける言葉をあれこれ考えながら彼の方へ歩き出す。

……と、5〜6歩進んだ所で目に飛び込んできた光景に、足がピタリと止まった。

ガジルの向かい側の席に、見慣れない若い女性が座っている。
少なくともギルドのメンバーではない。
年の頃は20歳前後と思われるその女性は、とても美しかった。
街を歩けばすれ違う多くの男性が振り向くであろう。
時おり頬を赤らめながら、嬉しそうにガジルに何やら話しかけている。
一緒に食事の最中のようで、テーブルの上にはほとんど無くなりかけた料理の皿が並んでいた。
後ろを向いているため、ガジルの表情を伺い知る事はできないが、その女性は少なからず彼に好意を持っているようだった。

全身から血の気が引いて、みるみる手足が冷たくなっていくのが自分でも分かる。
思いもよらなかった光景に、レビィは頭をガツンと殴られたような衝撃を受けた。


少しずつ後ずさりをすると、彼女は夢中で外へと駆け出していった。
僅かな間の出来事で、ギルド中でその事に気付いた者は誰もいなかったようだ。
ただ一人、カウンターでグラスを拭いていたミラジェーンを除いては………。
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