リクエスト作品
□ようこそ、この素晴らしき世界へ
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真夏の強い日差しが、太陽に近づいて飛ぶガジルの肌をジリジリと焦がした。
彼は翼を広げたリリーに抱えられ、ポーリュシカの家に運び込まれたレビィの元へと急いでいた。
「クソ……ッ!!!」
纏わり付くような重たい空気が、余計にイライラを募らせる。
基本的に、ガジルはレビィの仕事に一切口を出す事はない。
彼は興味の無さそうな顔をして、実は周りの状況をとてもよく見ている男だった。
実際、レビィの魔導士としての努力や実績は認めていたし、ここ最近のジェットやドロイの人が変わったような頑張りも十分よく分かっていた。
彼らが盗賊風情に遅れをとる事はあるまい、と思っていたが、まさか仕事に向かう途中で倒れようとは。
この苛立ちは、毎日レビィを一番近くで見ていながら、彼女の変化に気付けなかった自分自身に対するものだった。
マグノリアの東の森の奥深く。
治癒魔導士のポーリュシカは、ここにひっそりと佇む木の家に、ずっと昔から一人で住んでいる。
人間嫌いの彼女は、ここに人間が近づく事を良しとしなかった。
しかしマスターの昔からの知人という事もあり、「妖精の尻尾」の魔導士達は、魔法で傷ついた傷を彼女に癒してもらいに度々この家を訪れていた。
ガジルがいきなりドアを開け、息せき切って飛び込むと、そこにはドロイが一人だけで立ち尽くしていた。
「レビィはどうした!?」
「…奥の部屋だ。ポーリュシカさんの話じゃ、大した事はねえらしい。俺もまだ、詳しい事は聞いてねえんだ。」
『大した事はない』というドロイの言葉に、ガジルは一旦は安堵し、大きな溜め息を吐いた。
「そういえばお前ら、仕事に行く途中だったんじゃねぇのか?」
「ああ。ジェットがギルドへ知らせに行っただろ?そのあと一人で片付けに行ってる筈だぜ。」
「……へぇ。やるじゃねぇかよ?」
顔を見合わせた後、同時にニカッと笑う2人。
ガジルの傍らで、リリーがそのやり取りを満足そうに見つめている。