リクエスト作品
□今は、それでいい
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彼があの時守ってくれたのは、フェアリーテイルの一員になる為の、彼なりのケジメだったのだろう。
その他に、特別な意味なんて何もない。
それどころか、魔導士としてもまだ中途半端で、ましてや女性としての魅力にも欠ける私の事なんて、これっぽっちも眼中に無いだろう。
頭ではそう思っていても、ガジルへの淡い想いが膨らむにつれ、レビィは仄かな期待をどうしても断ち切ることができなくなっていた。
(ねぇ、どうしてあの時、私を助けてくれたの……?)
そんな事を考えながら、ゆったりと水を掻いていたその時。
「痛っ……!!」
どうやら足がつってしまったようで、レビィは身動きができなくなった。
それだけならば、しばらくすれば元に戻っただろうが、同時に全身から血の気が引き、気が遠くなっていった。
これはただ事ではないと感じ、レビィは声を限りに叫んだ。
「た…助け…て……。」
だが出てきたのは、レビィの意に反して蚊の鳴くような弱弱しい声で、一般客でごった返したプールの喧騒に一瞬でかき消されてしまった。
無情にも、レビィの身体は静かにプールの底へと沈んでゆく。
陽の光を反射して、キラキラと光りながら揺れる水面が、スローモーションのように遠ざかってゆくのが見えた。
意識を失ったレビィの視界が最後に捉えたのは、ザンッという音と共に上がった水しぶきと、その中から現れた大きな影だった。