頂き物小説

□あん様より
2ページ/6ページ

レビィがパンの包みをかばんに入れ、さあ妖精の尻尾の女子寮まで走って帰ろうと思っていると、前方から、雨を縫うように大股で走ってくる長い黒髪の魔導士の姿を見つけた。
「ガジル!」
レビィは思わず大きな声を出してしまった。
「!」
名前を呼ばれたガジルは、声の主のそばで歩みを止めると、かわいらしい青い髪の小柄な魔導士を見下ろした。
「ぐ、偶然だね」
ガジルは何も答えず、濡れて下りた前髪のかかった赤い瞳でただじっとレビィを見つめた。

最悪の出会いからしばらくして、思いがけずこの粗野な滅竜魔導士が、妖精の尻尾にやってきたときは、レビィは本当に驚いたものだ。
きっと、ずっと話なんてできない。
そう思っていたのに、不器用ながら彼なりになんとかギルドになじもうと努力しているのが、レビィには胸が痛いほどに感じられた。
さらに、気がつけば「バトル・オブ・フェアリーテイル」のゴタゴタの最中には、ガジルに一目おいている自分がいたのだ。
そして・・・。

せっかくガジルに会えたのに、この雨では立ち話もできない。
雨はますますひどくなってきた。
雷も鳴り始めた。
ガジルはそんなレビィの胸の内など知る由もなかったが、さっとレビィの肩を抱えるようにして、近くの建物の軒下へと導いた。
思いがけず、ガジルに肩を触られたレビィは緊張のあまりびくっと震えてしまった。
その振動に気づいたガジルが、そっとレビィの肩から手を外し、その手で下りた自身の前髪をかきあげた。

「買い物、かよ」
「う、うん。ガジルは?」
「仕事の帰りだ」
「そう」
「けっこう、降ってきやがったな」
そう言って空を見上げるガジルの横顔を、レビィはそっと見た。
かきあげた前髪が、雨にぬれた重みで、やはりばさっとおりてくる。
筋の通った高く形のよい鼻、燃えるような赤い瞳。
ガジルって、やっぱり、すっごくカッコイイ・・・。
レビィは自分がかあっと赤くなってくるのを感じた。
視線に気づいたガジルがレビィを見下ろして、言った。
「なんだよ?」
「な、なんでもない」
「傘もってねェのか」
「うん・・・」
ガジルはどうしたものかと、しばらく考え込んだ。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ