裏小説
□寄り道のススメ
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「どうしたのレビィ?もう5回目よ。」
「えっ!?」
「気付いてなかった?……溜め息。」
カウンターに頬づえをつき、今日5回目の盛大な溜め息を漏らしたレビィに、ミラジェーンは見かねて声をかけた。
「ご、ごめん!!何でもないよ、気にしないで。」
「そぉ?ならいいけど。……最近とっても綺麗になったのに、そんな顔してちゃもったいないわよ♪」
「そ、そうかな?何でだろ…アハハ///」
どこまで見透かされているのだろうとドキドキしつつ、レビィはリクエストボードの前で仁王立ちしているガジルをチラリと横目で盗み見た。
何故だろう。
あからさまではないが、最近彼に何となく避けられているような気がする。
普通に話をしていても、あまり視線を合わせてくれない。
レビィの勘が正しければ、それは初めて彼に抱かれたあの日からだ。
彼女にとっては初めての経験だったが、その不安や恐ろしさをガジルは全て包み込んでくれた。
それはとても甘美で、幸福な時間で……レビィはより一層ガジルが大好きになった。
ガジルも、きっと同じように感じてくれていたはずだ。全てを見せた事で、彼との距離がとても近くなった。
そう、思っていたのに……。
そんなレビィの悩みもつゆ知らず、渦中のガジルはリクエストボードを食い入るように見つめていた。
(こんなんじゃねぇ…。もっと、もっとデカい仕事はねえのかよ!?)
自分でもよく分からない苛立ちを持て余し、ギリッと歯軋りをすると、とりあえず目に付いた末端の闇ギルド退治の仕事を引っぺがして手に取った。
初めてレビィを抱いたあの日から、どう振り払おうとしても、四六時中その時の事が頭から離れない。
女性を知らない訳ではなかったが、あんな圧倒的な幸福感と愛おしさを感じたのは初めてだった。
何もかも、根こそぎ持っていかれそうだった。
再びレビィを抱く時、もしもタガが外れてこの想いの全てをぶつけてしまえば、彼女の華奢で小さな身体を壊してしまうのではないか。
何より、自分が今まで築き上げてきたものが全て崩れ落ちて、全く知らなかった自分へと変化してしまうのではないか。
無意識ではあったが、ガジルはそこから目を背けるように、ことさらに仕事に打ち込もうとしていたのだった。
そんなガジルを傍らで見つめていたリリーは、彼の苛立ちも、その原因も何となくは分かっていた。
だが、こればかりはガジル自身の問題である。
何より、生粋の武人タイプであるリリーも、こんな時にガジルにかけてやる言葉は持ち合わせていなかった。
今の所は静観するより他はなく、せめて仕事に差し支える事が無いようにサポートしてやるのが精一杯であった。
「おい、ガジル。この仕事は俺達だけでは少し手に余るんじゃないか?ジュビアかナツあたりに同行してもらった方が…。」
「いや、今は他の奴の手は借りたくねぇ。早えとこ強くなって、マスターやエルザにも俺の力をすぐに認めさせてやんよ。ギヒッ」
(……やれやれ。世話の焼ける男だ。)