裏小説

□寄り道のススメ
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翌日、闇ギルド退治の仕事から早々に戻ってきたガジルとリリー。
あっという間に片付いたのかと思えば、そうではないようだ。

自分への怒りで肩を震わせながら、ガジルはギルドのいちばん隅のテーブルにドカッと腰を下ろした。
今ではすっかりフェアリーテイルの一員となり、ギルドに溶け込んでいたガジルだったが、この時ばかりは、まるでファントム時代に逆戻りしたかのような近寄りがたい雰囲気を醸し出していた。

今にも弾けそうなガジルの苛立ちを見かねて、リリーが何かを言おうと大きく息を吸い込んだ、その時。

「……よお。お前さん、珍しくヘマやらかしたそうじゃないかえ?」

場違いとも思える間の抜けた声で話しかけてきたのは、他でもない。
壊滅したファントムからガジルを拾い上げてくれた恩人、マスター・マカロフであった。

マスターの言う通り、功を焦ったガジルは、情報を嗅ぎ付けられた上に、幹部のメンバーを軒並み取り逃がしてしまったのだ。
見かけによらず、仕事に対しては慎重過ぎる程の彼としては、珍しいほどの失態であった。

「今回だけだ!この次は絶対に、うまくやらぁ。」

「やれやれ…何をそんなに焦っておるのじゃ?」

「別に焦ってる訳じゃねぇ!!」

「……ほ、そうか。ではこういう時にはゆっくり休んで、おなごにでも慰めてもらうのがよかろうて。」

「う…っ///うるせぇ、女なんかに構ってられっかよ!!…見てろよ。すぐに強くなって、俺はS級魔導士になってやる。寄り道なんざしてる暇はねぇ!!!」

「……そんなに怖いのかの?おのれが、変わってしまうのが。」

「…………何だと!?」

鋭い目つきで睨み返したガジルだったが、その瞳には明らかに動揺の色が見てとれた。

「ガジルよ、ワシはお前さんの仕事ぶりは高く買っておるよ。大胆にして細心、プロ意識も相当なものじゃ。長いことギルドを見てきたが、おぬしのような人材は、そうそう得られるものではない。」

「………。」

「じゃがの…お前さんは少々、真面目すぎるようじゃ。寄り道するのは、何も悪い事ではないぞ。そこから得られる物も多い。人生に、無駄な事など何一つありゃせんよ。……おなごを愛してやる事もな。」

「はぁっ!?だから、なんでそういう話になんだよ;;」

「とぼけんでもええわい。ワシャあ、伊達に長いこと人を見てきたわけではないぞ。あの娘は…レビィは、お前さんのような男には申し分のない子じゃよ。」

「……………!!!」

一瞬目を見開いて惚けたような表情を見せたガジルは、すぐにその意味を理解すると、その強面をみるみる赤く染め上げた。

そして、怒ったようにことさらに大きな足音を立ててカウンターへと向かうと、鉄屑を一心不乱にバリバリと貪り始めたのだった。


「リリーよ、あやつのお守りもなかなか大変じゃの。」

「……いやいや。あれでなかなか、面白い男ですよ。しかし…流石はマスター。アイツの事をよく分かっておられる。」

「褒めても何も出やせんよ。ま、これからもよろしく頼むぞい。ほっほっほ♪」
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