TEXT

□光合成少女
1ページ/2ページ




目の前には、綺麗な女の子達がずらりと並んでいる。


近くで見る明るく染色された髪や流行の派手な着こなしに、強い眩しさを感じた。

そして何より印象的なのは、すらりと伸びる綺麗な手足。
白くきめ細やかな肌に目を奪われる。


けれども、その私とは程遠い容姿から発せられた言葉たちは、とても鋭利で。



「亮太に桜田さんとか、正直釣り合わないよねー。なんで?って感じ」

「言っとくけど、亮太は皆に平等に優しいんだからね。勘違いしないで」

「からかわれてるだけだと思うよ。桜田さんカワイソー」

「ていうか、ぶっちゃけあたし達の方が全然仲良くない?教室で二人が喋ってんの見たことないんですけど」
「え、桜田さんって口聞けんの?」


それらの声に賛同するように響く高い嘲笑が、私の動機を速める。


中でも目立った美人の中嶋さんが耳元で
「このこと、亮に言ったらどうなるかわかってるよね」
と囁いた後、集団は去って行った。


中嶋さんは辻くんの幼馴染みで、昔から仲が良いことで有名だ。

私が辻くんに告白する前まで、人気者の彼がもしも誰かと付き合うとすればそれは中嶋さんだろうと専らの噂だったらしい。


去り際に見た彼女の憤りに満ちた瞳が、胸の内に溜まる罪悪感をより大きくする。




次々と心を抉る言葉は、どれも普段私自身が強く感じていることだった。
あのクラスメートの言い分全てが、至極最もなものだと思う。
彼女達が怒るのは当然だとも思う。


だから辻君を名前で呼ばないでなんて言う権利、私にはない。
まして、辻君と喋らないでなんて、思うことさえ許されない。



ふいに鼻の奥がつんと痛くなった。

視界が揺らぐのは、べつにあの子達のせいじゃない。
自分の中の黒い感情が増幅するのを感じたからだ。

もう潮時だと思った。






始めからおかしいとは思ってたんだ。
辻君が私なんかと付き合ってくれるなんて。
明るくて男女問わず人気者の辻君と根暗で友達もいない私が不釣り合いなことくらい、重々承知していた。


それでも告白したのは、辻君の優しさに舞い上がってたからだ。

辻君は太陽みたいに眩しくて、教室で独りぼっちの私の心を癒してくれたけど、その暖かさは私だけのものじゃない。
当然だ。

身の程知らずの滑稽で地味な女、それが私なのだと改めて自覚する。


辻くんと一緒にいたいけど、もう無理だ。

明日、別れを告げよう。



それだけ決めて、私は帰路についた。







.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ