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□言葉にするには××××すぎて
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さらに年月が経った。
もちろん僕はその間にも大勢の人間を殺した
死体は毎回同じように処理し、そして同じように消え去った。


僕はいつしかその犯人にある特殊な感情を覚えるようになった。
それをなんと呼ぶのかは知らないが、何も無い裏山を見る度に高まってゆくのを感じた。
いつしかその感情を得ることにだけに、自分の生きる価値を見出だすまでにも。


とある日、僕は幼馴染みの一人と小さな諍いを起こした。
僕は今までと同じように彼女を殺し、裏山に棄てた。

家柄もそれに伴う財力にも天と地の差がある僕と彼女は親しい間柄であるわけはなく、家が近所だったという単純な理由で子供の頃多少接点があった程度の仲であった。
その時話をするまで長らく接していなかったように思う。久しぶりに見た彼女は、苦労をしている者特有の陰欝で冴えない表情をしていた。
普段僕の周囲にいる女といえば皆競い合うように華美な恰好をしているから、その環境が手伝ったせいもあるかもしれない。彼女が纏う地味で暗いは雰囲気は、変に印象に残った。やはり貧乏人は気苦労が絶えないのだろうとぼんやり思ったのを覚えている。


そういえば今よりもっと若い頃、僕は元々片親だった彼女の母親を殺したのだった。
しかし愚かな彼女は、僕が犯人であるなんて夢にも思わないのだろう。

まあ、そのようなこと等僕にとってはどうでもいいが。



裏山を去るとき、犯人のことを思い出しぞくぞくした。
明日がたのしみだ。



翌朝、裏山へ行くと幼馴染みの死体があった。
今まで一度たりともこんなことは無かったので、驚愕した。

その翌日も翌々日も死体は消えなかった。
僕は不思議に思うとともに、一つの疑いをもって彼女の家に向かった。


幼い頃に数回訪ねたきりの彼女の家は古く小さく、扉を押すだけで簡単に入ることができた。
唯一の家具らしい家具である卓袱台の上には、ペンや白い便箋の他に彼女の両親の写真と二つのお骨が並んでいた。






すべてを理解した僕はいま涙を零す。
きっと××××であるはずの××××を初めて抱いた相手を、失ったことに気がついたから。

身体を切り裂かれるような痛みとともに感じる絶望は、残酷に僕を蝕んむ。嗚呼、僕はこれから壊れるんだ。直感にそう教えられた。生きる価値を失った者には最早生きる意味など無い。
そうなのだ。僕は誰にも××××されて等なかった。
僕はずっと××××が欲しかった。一人でも僕自身を××××してくれるひとがいればそれでよかったのに。本当は××××し合いたかった。誰かとではなく××××と。
信じていた世界へ別れを告げながら、たったひとつだけ真理を見つけた。


彼は僕に対し完璧に復讐を成し遂げたのだと。





END
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