□欲しい物は決まってる
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今日は自隊の隊長藍染惣右介の誕生日である。

隊の女子全般はプレゼントを用意しているハズだ。

…が雪野はまだ何も用意していなかった。

他と同じくならないようにと悩んでいた結果何も用意できなかったのである。

「どーしよ…」

執務室からはプレゼントが前の廊下へと溢れ出ていることだろう。

「何やってんのさ」

「あ…」

同僚の1人が満面の笑みで寄ってきた。

彼女とはよく食事をしたりする。

「まさかアンタ藍染隊長にプレゼント買ってないとか?」

「えと…」

「図星かぁ」

「ま、まあね」

プレゼントを買いに行くにも恐らく何処の店も混んでいることだろう。

毎年のことであるが支持の高い隊長格の誕生日は当日にプレゼントを買う者も多い。

「買いにいくなら早くしなよ。」

サボるなら早いほうがいい、と同僚は笑って何処かへ歩いていってしまった。

「どーしよ」


+++

日が沈み始めた。

迷いに迷った挙句、まだ何も買っていない。

藍染の定時は迫っていた。

流石に職務をサボるわけにもいかず早めに片付けたつもりなのだが、やはり時間が足りない。

「…どーしよ。」

「何がどーしよなんだい?」

「え?…!!!!!!」

後ろから声を掛けたのは当の本人。

「藍染隊長、お疲れ様です!!!」

まさか、出くわすとは。

「で、どうしたんだい?」

「えと…あの…」

「ん?」

雪野はひらめいた。

欲しい物を本人に聞いてしまえばいのだと。

そうすれば悩む必要もない。

相手の望まないものを贈ることもない。

名案である。

「欲しい物ってありますか!!!!!」

「欲しい物?」

「はい。今日は藍染隊長の誕生日なので。」

「なんでもいいのかな?」

「私に出来る範囲なら。」

藍染の微笑が一瞬黒くなった気がした。

「特にないかな。でも、強いて言えば…」

「強いて言えば?」

「奏君が僕にキスをしてくれると嬉しいかな。」

「は?…ご冗談を…」

「僕は本気だよ。」

「えと…」

「奏君に惚れてるんだ。」

「口説いてるってことですか?」

「そう。で、姫のお答えは?」

「私でいいんでしょうか…」

「私は君に惚れたんだ、奏君に。」

藍染は優しく微笑んで見せる。

「でも…流石に公衆の面前では…」

「人目につかないところにいったら僕の理性が持たないかも。」

「…。」

雪野は頬を膨らませた。

「怒ったかな?」

藍染は困ったように肩をすくめる。

「別に怒ってないです。」

つま先立ちになって藍染へ触れるだけのキスをした。

「奏君は僕のことどう思っているのかな?」

「私も好きですよ。藍染隊長のこと。」

困ったように笑い藍染は奏へ口付けを落とす。

「惣右介でいいよ。」

「じゃぁ惣右介、今日泊まりにいってもいい?」

「いきなりだね。いいよ、おいで。」

藍染は雪野の手を引いて歩き出した。

「そういえば、アタシのどこに惚れたの?」

「全部。」

「大雑把すぎ。」

お互い顔を見合わせくすぐったそうに笑う。

「でも奏が欲しかった、ってのは間違いない。」

「じゃ大事にしてくださいね。」

「勿論です。」

ふざけながら歩いていく。

つながれた手が離れることは無かった。

                 完
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