□星に願い事を
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今日は七夕。

朽木邸の庭にも笹が飾られている。

「白哉ぁ〜短冊書いた??」

「ん。奏は?」

「書いた、書いた。」

縁側で奏は嬉しそうに笑った。

「何を書いたのだ?」

「内緒。白哉は?」

「内緒だ。」

奏を見て白哉も微笑んだ。

「ね、今日逢えるかな?」

「何がだ?」

「織姫さんと彦星さん。」

「逢えるといいな。」

「だね。」

お互いの顔を見て微笑み空を見上げる。

夜空は雲に支配されかけていた。

「そろそろ結ぶか。」

「あ、うん。」

奏と白哉は笹を挟むようにして向き合う。

「アタシの見ちゃ駄目だかんね。」

「分かっておる。それより…」

「何?」

「花火やるか?」

「やるっ!!!!!」

今日の昼間に用意させた、と白哉が得意げに笑った。

「着替えてくる。」

奏はスタスタと屋敷の中に戻っていき…10分後。

「どう?」

黒地に上品で可愛らしい桜が描かれた浴衣を着て出てきた。

「綺麗な浴衣だな。」

「そこじゃなくて…」

「ならば何処だ?」

「も、いい。花火やる。」

奏は少しむくれながら手持ち花火に火をつける。

色とりどりの火薬が燃え、綺麗な色で辺りを明るくしていく。

白哉も並ぶように立ち奏から火を受け継いだ。

「拗ねたか?」

「別に。拗ねてない。」

「本当か?」

「本当。」

あからさまに拗ねた様子の奏を見て白哉は微笑んだ。

「よく似合っている。」

「え?」

「その浴衣奏に良く似合っているぞ。」

「そ、そう?」

「ああ。」

「よかった。」

宵闇の中二人の楽しそうな声と花火の火が浮かんでいる。

そして、笹にはお互いの幸せを願う2つの短冊が揺れていた。

                完
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