多種

□雨探し
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気が付けば雨が降っていた。

「雪野君すまないんだけど市丸隊長探してきてくれないかな?」

「あ、はい。分かりました。」

玄関を出ると雨が一層強くなった気がする。

傘をさしてギンがいそうなところを手当たり次第探すべく歩き出した。

何箇所かまわった所でふと知った霊圧を見つけ辺りを見回してみる。

「ここやて」

「市丸隊長…」

木の上で雨宿りしていたらしい。

ニンマリと笑いギンが木から飛び降り傘に入ってきた。

「吉良副隊長が探してましたよ。」

「んー?いつものことやん。」

「雨降ってるから余計心配なんじゃないですか?」

「そうやと思う?」

「ええ、まぁ。」

「そうかぁ。ほな、帰ろか。」

ギンは奏の傘を持つ。

「あの…」

「こっちの方がええやろ。ボクの方が大きいし。」

「…ですね。」

二人は隊舎へ戻った。

翌日、奏は風邪を引いた。

原因は一目瞭然だ。

「すいませーん?誰かいますかぁ?」

熱でぼーっとした体で玄関の戸を開ければギンがいる。

「・・・どうしたんですか?」

「あぁ、お見舞い。」

「お見舞い、ですか。」

「せや。ほら風邪ひきなんやし寝てなアカンて。」

半ば強引に布団へ寝かせられ枕元にギンが座った。

「あの…」

「ちょぉ用事思い出したわ。ほな、また。」

ギンはお大事にと言い残し帰っていった。


翌日も、その翌日もギンはやって来た。

「ボク、こんなに気にかけるの奏ちゃんくらいやで?」

「それは、ありがとうございます。」

「奏ちゃんてもしかして鈍い?」

「え?そうですかね・・・」

「もぅ鈍いなぁ。好きやて云うとんの。」

「…?」

「せやから好きなんやて。奏ちゃんのこと。」

ギンは恥ずかしそうに頭を掻く。

「…私は・・・隊長には到底釣り合いません。」

「そんなことないて。」

「でも…」

「そんならボク隊長辞める。」

「え!?」

「奏ちゃんが釣り合わん云うなら隊長なんか辞める。」

「そう云う意味じゃなくて…」

「ボク本気なんや。」

「私は…」

「奏ちゃんの本当の気持ちが知りたいねん。」

「私も…好きです。」

「ホンマに?」

恥ずかしくなって小さく頷いた。

「フラれるかと思うた。」

「私でいいんでしょうか?」

「勿論や。」

「ギンって呼んでもいいですか?」

「ええよ、彼女やし。なぁ奏」

「ギン・・・」

奏の手を握る。

「手暖かいな。」

「ギンの手が冷たいんだよ。」

強く、握った。

「今日の夕飯ボクが作るなぁ」

「ギン作れるの?」

奏が真顔で心配してくるのでギンは思わず笑ってしまう。

「何か食べたいものあるん?」

「んとね、消化のいいもの。」

「それは分かっとる。」

顔を見合わせ笑い合った。

梅雨が雨がもたらした小さな幸せ。


                完
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