□ラムネ
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駄菓子屋で買ったラムネを1本づつ持って河原へ向かった。

適当な所に腰を落としラムネを開ける。

炭酸の抜ける涼しげな音と共にラムネが沈む。

「お前、本当にラムネ好きだな。」

「うん!!綺麗じゃん。」

嬉しそうに奏が笑う。

「そうか?」

「ビー玉が入ってるトコとか」

「よく分かんねぇ」

飲みかけのラムネビンを見つめてみるがそれはいたって普通だ。

「ラムネはね、美味しさが毎回違うんだよ」

「何だそりゃ」

「例えば夕方に飲むとするでしょ?」

「ああ」

「それで飲み終わったラムネビンを夕日に翳すとさとっても綺麗なの」

「…」

「普通に見ても綺麗だよ?でもラムネビンから見るともっと綺麗なんだ」

「そうか」

夕日というにはまだ少し早いくらいか。

太陽が地平線へ帰る準備をしている。

「のーんだ」

「早ぇーよ」

奏は空になったラムネビンを翳し真面目に空を見上げた。

少し残っていたラムネを一気に流し込み冬獅郎もラムネを翳す。

「綺麗でしょ?」

「まぁな」

「今日のラムネは一番美味しかったかも」

「何でだ?」

「冬獅郎と飲んだから」

「俺と?」

「そう。小さいことだけどアタシにとっては幸せ。」

「安臭ぇな、奏の幸せは」

「いいじゃん」

「俺も今日のが一番美味かったかも。」

「本当?」

「久々に飲んだしな。」

「そこぉ〜」

「冗談だ。」

奏の表情がころころ変わるから自然と冬獅郎の口角もあがる。

「ラムネで幸せに出来る嫁なら楽でいいかもな」

「ばーか」

「うるせーよ」

翳したままのラムネビンは夕焼けに染まり輝いていた。

                 完
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