□パズル
2ページ/3ページ


葉を紅く染めた木々がまるで鮮やかさを自慢するかのように立っている。

長い髪を弄ぶかのように吹く風は寒空の下同様に冷たかった。

「何やってんだろ。」

溜息と一緒に独り言を口にする。

その言葉は風が何処かへ運んでいった。

恋人の白哉と大喧嘩をしてしまったのだ。

原因は大したことではない。

しかし、奏にとっては大きなことだったのだ。

「馬鹿だな、アタシ。」

謝りに行くことも出来るがそれは白哉に負けた気がして気がひける。

こういう強情さが悪い所だと思う。

勢いで白哉の屋敷を飛び出してしまったため自宅に帰る気も起きない。

辺りが暗くなり始めた。

街灯など無いこの道では辺りが真っ暗になってしまっては帰り道が不安だ、と思い仕方なく歩き出した。

夜が深くなりはじめ、足を速める。

「このような時間に女子が一人か?」

「アンタには関係な…」

ない、と続く筈の奏の言葉は声の主を見て途切れた。

「白哉」

「済まぬ、探すのに手間取った。」

「何で…探しに来たの?」

「文句でもありそうだな。」

「だって。もう嫌われたと思った。」

「私がお前を嫌うとでも?」

「白哉勝手にしろって云ったから…」

「あれを本気にしたのか?馬鹿者。」

「馬鹿じゃないもん。」

「全く。帰るぞ。」

見つかってよかった、と呟いて白哉が奏の手を引いて歩き出す。

「白哉。」

奏が立ち止まった。

「どうした?」

「ごめん。」

「悪かったのは私だ。気にするな。」

「ごめん。」

俯いた奏を抱きしめる。

「謝らずともよい。」

「でも。」

「お前は私の妻になるのだぞ?自分の発言に自身を持っていろ。」

「妻?」

「私の傍にいてくれるのであろう?」

「いや、でも妻って」

「一生恋仲で終わるのか?」

「それは嫌だけど…」

「では決まりだな。」

「…うん」

「では行くぞ。」

奏の手を引いて再び歩き出した。

                完


パズルみたいに簡単ではないけれど

いろんな壁にぶつかっても

結局一緒に居られたらいいよね?
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ