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□うつけもの
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うつけもの
「なまえちゃん言うん?かわええ名前やね、せや、今日の夜、ボクの部屋おいで、悪いようにはせえへんよ」
と。
漸くギリギリ席官入りした私は、その誘いを断ることなどできなかった。
そうして、そのようにされて、これもまた関門であるのかと半ば諦めた。
初めてだった私が面白かったのか、それからも頻繁に呼ばれている。
それもそれで、悪い冗談だ。
「なまえちゃん、今日もボクの部屋に来ィ、可愛いお菓子見つけてん」
「…はい」
「そないかしこまらんで、ええよ」
「申し訳ありません」
ほな、と笑う市丸隊長が、憎みきれない。
私は確かに、市丸隊長に憧れていたのだから。
霊術院の師範と話す涼やかな面差しに、少なからず恋慕していたのだから。
(お菓子、なんて、そんな…優しくしないで)
(いっそやるだけやって捨て置いてくれたなら)
(でも、だめ、離れられない…なんてバカなの、私)
三番隊に入れると聞いて、私はどれだけ喜んだだろう。
あの精悍なその人を、どれだけ焦がれただろう。
どれだけ恋しく、あいさつへと向かっただろう。
(愛人でもいい、なんて、どんな売女なの)
一昨日抱かれた体が疼いた。
市丸隊長が残した朱印が、今も私の背中にはびこっていた。
隊長はいつも、多すぎるくらいに私の体を噛んでいる。
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